久しぶりに咲良は従妹の真香(まなか)から電話を貰った。


「咲良姉さん、ごきげんよう!
お元気でですか?
ええ、私はとても元気です。
もう直ぐ、落ちアユの時節ですよ。
遊びに来ませんか?
いろいろ相談したいこともあるし。
私がそちらに行ければ良いんだけど、今年は私、秋祭りの役員にさせられたので、祭が終わるまで村を離れることが出来ないので、もし、良かったら、咲良姉さん、こちらに来てくれません?」

「いいわよ。
懐かしいな。
子供の頃は毎夏休み、行っていたものね!
パパ達に聴いてまた私から連絡しますね!」

従妹の住む所は、宮崎県の北西部の東臼杵郡の椎葉村と言う日本三大秘境と言われる人口3000人足らずの村だった。
母の多美子の里だった。
咲良は真香からの誘いを両親に話した。

「そう、真香ちゃんから電話が来たの!
久しく墓参りをしていないから、行きたいわ。
ねえ、貴方。
良いでしょう?
行きましょうよ!」

「うん、行くか?
運転手がいるな!  
私一人では少し辛いよ!」

「純一さんを誘う?」

と咲良が訊いた。

「ああ、純一君を誘おう。
彼なら安心して運転を委せられるから。」

早速、咲良が電話した。

「私達椎葉村に行くことになったの!
純一さん、行かない?」

「椎葉村か?
良いな!
何時行くのだい?」

「9月中頃の連休。」

「良いな。
丁度間に合うよ。」

「何が間に合うの?」

「新しい車買ったんだ!」

「ほんと?
何を買ったの?」

「トヨタのアルフアード。」

「凄いじゃない。
その車なら、ゆっくり行けるわよ。」

「そうだ!  太一とツウーリングする約束をしていたんだ。
彼も誘っていいかな?」

「良いと思うよ!
だったら、友香を誘おうかしら。」

「太一が喜ぶよ。
誘いなよ。」

「あら、太一さん、そうなの!
友香をね!
ふーん。」

「駄目だよ。
これ内緒だから!」

「分かったわよ。
じゃあ、それで予定をたてるから、よろしくね。」

9月中旬の3連休が来た。
朝8時に純一が太一と友香を拾って購入したばかりの自慢の白いアルフアードでやって来た。

「純一君、これは良いな!
良い車だ!」

と幸一は上機嫌で二列目の運転席の後ろに乗り込んで言った。

「初めまして、山田太一です。
先日は咲良さんに大変お世話になりました。
また今日は御一緒させて頂きます。
よろしくお願いします。」

と挨拶を交わした。
純一が運転して一路九州縦貫自動車道の太宰府ICを目指して車は走り出した。
高速道路は連休のため少し混んでいたが、順調に南下して北熊本SAでトイレ休憩を取った。

「純一さん、時間の余裕はあるよね?」

と咲良が質問した。

「ほうら、来た。
また何処かに寄ることになるだろうと思って、時間の余裕は取っているつもりだけど!」

「高森町は通るよね?」

「いや、その予定は無いけど、高森に寄りたいのだったら、ルートを少し変えなければいけないな!
高森の何処に寄るの?」

「私、さっきから高森町という文字化とラクダの形をした山がチラチラして仕方が無いの!」

「分かったよ!
高森の何処に寄るのか?
上にちゃんと訊いてよ。」

「うん、分かった。
ちょっと待ってて、トイレをすませてから訊いて見るから。」

15分後、車に皆が集合して、今度は運転を太一が引き受けた。

「咲良ちゃん、高森の何処だった?」

「行けば分かるって。」

「それではナビを入力し直そう。
高森町経由だ!」

「・・・よーし、出たぞ。
太一、益城、熊本空港ICで下車してくれよ!」

「分かった。それでは出発するぞ。」

九州自動車道を降りて、28号線のグリーンロードを通り、約50分で高森町の看板が出て来た。
外の景色を一生懸命眺めていた咲良が言った。

「あそこ、ほら、ラクダのコブみたいな山があるでしょう。
あそこに行って。!」

地図ではらくだ山と書かれていた。

  高森町らくだ山

近くまで行くと、らくだ山地鶏の店の横から少し上に登れる道を発見して上がると、大きな白い仏舎利塔が建っていた。

  らくだ山仏舎利塔

その前に車を停めて、塔の横から登れる階段道があり、少し上がると、南阿蘇山、外輪山が見渡せる展望所があった。

   らくだ山展望所

「ここで良いわ!
阿蘇山の高岳に向かって、挨拶をしましょう。」

「咲良、ここには何方がおられるんだ?」

「地乃世界之大神様の長男神、末代様の兄神様の日乃出生魂之大神様の御陣場です。」

6人は並んで二礼三拍手一礼をして、幸一が代表して挨拶をした。

取り継ぎが来た。

『よく来てくれた。
厳しい局面を、そなた達は、いったい幾つ乗り越えて来たのであろう。・・・・・・。
神々の手が届かぬところで、生宮達は立派に生長した。・・・・・・。
日月天上界には、もう、戻れぬと分かっていながら、いつかはと、何処かで、諦めきれぬものをかかえ続けていた。・・・・・・・・・。
地乃日之出と言う大役は場合によっては重い手枷足枷となり、その御役まっとうすることもかなわず、最後の詰めの段階で、何時も逃げていた。
それが一番正直なところだ。
日乃出の温かさなど裏を返せば弱さと表裏一体。
しかし生宮達の生き方を見ているうちに、それに背中を押される様に強くなって行った。
地球管理神の中の自神の立場も、真っ直ぐ見つめられる様になった。
末代殿との和解も、もう時期が来たようだ。   以上。       日乃出生魂、No.0』

「これは日乃出生魂之大神様の元神様、お言葉有難うございます。」

『これより椎葉に行くのだな?
自然霊之長神に挨拶を忘れぬように。
大変、規律を重んじる神だから。』

「御忠告有難うございます。
それでは失礼致します。」

咲良達はらくだ山を後にした。

                                                                                  (つづく)