お供えをして、咲良はニ礼三拍手一礼して
「太一は知らなかったんだね!
この咲良さんには霊能力があって、人霊さんや神様が観えて、話が出来るんだよ。」
「ほんとですか?
それで人霊さんがこのお供えを食べられるのかな?」
「皆さんには観えないかも知れませんが、今、この島におられる人霊様や御存在様方がここに集まって来ておられますよ。
そして、食べられておられます。
いや、気を吸われています。
純一さん、お酒をお供えしてあげて下さい。」
「了解。」
と純一は一升瓶から酒を湯呑み茶碗に入れて、どうぞと供えた。
「この島の人霊さんや御存在全部がここに集まって来ているのですか?」
「はい、そうです。
縄文人の御霊さんもおられるようですよ!
阿曇族の先祖だと言われています。」
「恐竜はいないのかな?」
「いますよ!海にいたサメの化物みたいなものなんか、いろいろと来ています。」
その時、部屋の隅の方に向かって咲良が言った。
「貴女様は供え膳を召し上がらないのですか?」
『私はいいんです。
この家の関係者ですし、大神の裁きを待つ身ですから!』
「御名前は?」
『・・・・織江。』
「織江さんと言うお名前ですか?」
「エエーッ!
今、”織江”と言われてましたか?」
「はい、織江さんと言われる人霊さんがそこの部屋の隅におられますよ。」
「”織江”・・・。
貴女は成仏したのでは無いのですか?」
と、太一の母親ののぶが言った。
「先程、お母さまに付いてここに来たのだそうです。
あんな、葬儀では成仏等、出来ませんと言われています。」
「私、私について篠栗から来たというのですか?」
「はい、先程、初めてお会いして挨拶をしました時、何方か、御霊がお母さまの後ろに隠れておられると思ったのですが、それが織江さんだったんですね。」
「私は今日、織江の葬儀に参列するために糟屋郡の篠栗町の檀家寺に行っていたのです。
織江は私の末の妹なんです。
5日前に交通事故で、死んだのです。」
「そうでしたか?
何か織江さん、お姉さんに話たいことがあるようですよ!」
「話!
まさか、あの壷についてのことでは無いでしょうか?」
「そのようですよ。」
「咲良さんでしたね!
迷惑お掛けしますが、取り継ぎしていただけますか?」
「分かりました。
織江さん、私で、よければお姉さんとの話の取り継ぎをしますよ?」
「分かりました。皆さんにも聴いていただきましょう。
どうぞお話し下さい。」
『お姉さんを始め、皆様に御迷惑をお掛けして申し訳ありません。
私はこの島の宗像大社中津宮の巫になりたいと思い、宗像大社に就職して、日々修行に励んでおりました。
5年前の7月7日の七夕の日、辺津宮の山奥にある高宮を掃除しておりましたら、ある修験者の方と御会いしたのです。
その方は私をジッと観られてから、「貴女のミタマ親神様は金山姫之大神様だね」と言われました。
話を詳しく聴きたくて、連絡先を聴いて、後日、その方の修行道場をお尋ねしたのです。』
「それが、あの岡崎牽牛と言う男なのね?」
(つづく)