純一から咲良は海水浴に誘われた。
彼の学生時代の友人も来るので、友香ちゃんも、できれば誘ってほしいと言われた。
「何処に行くの?」
「うん、山田、友人の名前だけど、山田の実家が宗像大島なんだ。
里帰りするから、一緒に行かないか、良い海水浴場があるから、一泳ぎしようぜ!
と言うんだ。
誰か誘ってこいよ!彼女等を!
と言われて、僕には彼女がいないから、咲良ちゃんどう、行かない?」
「あら、私、純一さんの彼女がわりですか?」
「いやー、そんなつもりで言ったんじゃないよ!
山田の実家が民宿をしているそうで、宿泊も出きるそうだから、楽しもうよ!
たまには、神様から離れて一人の女性として遊んでみてはどうかと思って、どう?」
「うん、分かった。
ちょっと待ってて、友香に尋ねてみるから。」
友香は今年の夏用に早くから新しいセパレートの水着を購入していたが、まだ、一度も着る機会が無くて、咲良の誘いに飛び付いて来た。
8月の初めの土日に行くことになった。天神町の天神フタタビル前で待ち合わせして、咲良と友香は純一の車に乗り込んだ。
福岡都市高速道路の北天神から載って、北九州方面に走り、香椎東で降りて、地方道路495号を北上して、約1時間半で宗像市神湊の宗像大島への渡船場に到着した。
純一の友人の山田が待っていた。
「山田太一と言います。
もう聞かれたと思いますが、長谷川とは大学で友人になりました。
宜しくお願いします。」
「こちらこそ、私は五味咲良と言います。
こちらは私の友人の沖友香です。
今日はお世話になります。
宜しく。」
「さあ、急ぎましょう。
11時15分発のフエリー「おおしま」に乗りましょう。
長谷川、車の車検証を持って来てくれ、車検証がなければ切符が買えないから!」
「分かった。
すぐ、行くよ。」
二人は走って切符売場に行った。
戻って来ると、直ぐにフエリー「おおしま」に車ごと乗船した。
僅か25分で宗像大島の渡船場に上陸した。
太一が運転して島の東の小高い丘の上に建つ「民宿やまだ」の前の駐車場に車を停めた。
「さあ、上がって下さい。
昼飯を食べたら、さっき来るときに見えていたでしょう?
かんす海水浴場に一泳ぎしに行きましょう。」
と3人を民宿に案内した。
二階の部屋に入り、窓を開けると素晴らしい景色が待っていた。
「いらっしゃいませ!」
と若い女性が冷えた麦茶と水菓子を運んで来た。
「これ、妹の詩織。」
と、太一が皆に紹介した。
「お袋は?」
「今日は本宮の叔母様の命日で行っているのよ。
夕方には帰るといっとったよ。」
「そうか、もう叔母さんの3回忌になるんか?」
「うん、早いものね!
あの時は大変だったから、昨日のことの様な気がするけど、もう3回忌。」
「まだ、あの道場は在るんか?」
「いや、もう人手に渡ったみたいよ。」
「じゃあ、お袋達は何処で叔母さんの3回忌をしているんだろう?」
「ママの実家のお寺と訊いたけど。」
「そうか、叔母さん、実家の墓に入れて貰えたのか、良かったな!
あっつ、ごめん。こちらの話ばかり、してて!
詩織、昼御飯は何だい?」
「はい、冷や麦の用意を今していますから、もう少し待って下さい。」
(つづく)