車はナビに従い進み国道20号線から中央自動車道方面に行き、勝沼料金所を抜けて中央自動車道に入る。

初狩PAで昼食タイムとして休憩する。
峠の茶屋のおにぎりとラーメンが美味かった。
PAを出発して直ぐに多美子に異変が発生した。
始めは大石神社での出来事を話していたのだが多美子は何も記憶が無いと言っていたが、ただ一言「リョウジョク」という言葉だけは記憶していると言っていた。
「リョウジョク」とは「凌辱」だろうか?  等と話していたときだった。
車内で多美子の体内に入った花依姫様が発動した。
多美子の顔が険しくなり、怒りに満ちて来た。
咲良が直ぐに気付き、手当していた。

『・・・・一度でよい、鬼となり、"彼等"をつぶしてよいですか?   このままでは帰れない・・・・
妻神として道城義則の妻として(このままでは)彼(道城様)の思いに応える術がわからない、助けて!
鬼となることを   どうかゆるして下さい。』

楽しい旅行の車中は一気に沈黙した。

咲良に取り継ぎが入った。

『花依殿、そなただけでは無い。
私の妻、稚姫君(わかひめぎみ・末代様の妻神上義姫様の別名)も「あちらの世界」の中で、おどろおどろを演じ切ったのだ。
皆で以和尽礼をしてあげてはくれぬか?
花依姫殿、道城殿が待って居られる。
もう十分に怒りの炎は不動明王と権化されて出し尽くされて居られる。
そなたは十分に地球神界会議々長の妻神としてのお役を果たされた。
安心して道城殿の胸にすがられるが良かろう。』

「どうも僕には理解出来ません。」

と純一が上に向かって言った。

『我らを恨んでいるか?・・・・
純一殿、そなたの妹が非道な最期を遂げたことを思い出したのだな。
ヒトは真っ直ぐな道を歩こうとする時、対象物と自分との位置を確認しながら進んで行く。
その対象物が遠ければ遠いほど、その道の真っ直ぐさは正確になる。
我らの存在がそなた達からかけ離れていればいるほど、そなた達の歩む道は真っ直ぐ延びる。
そこに反対側と呼ばれるものの存在の意義がある。』

「どなた様でしょうか?」

『根元初動から出たもの。』

「神様は非道だなぁ!」

と純一はストカー被害で妹を亡くしたことを考えながら呟いた。

「私はそうは思いません。
良いことも悪いことも全て根元之大御神様がおつくりになったんですから、ちゃんと意味があるはずです。」

と咲良が呟いた。

多美子の被害は治まって、車は川名交差点を左折して県道32号を直進していた。
山梨市を出て、約3時間を経過していた。
ナビに導かれて、鎌倉市坂ノ下の鎌倉パークホテルにチェックインした。
今回はこのホテルに二泊の予定となっていた。
評価4星ホテルだった。
夕飯は幸一の要求でタクシーでJR鎌倉駅近くの小町にある「居酒屋あじたろう鎌倉店」を予約してゆっくりして出かけた。

  居酒屋あじたろう鎌倉店

テーブル席でまず湘南地ビールで乾杯して、地魚の刺身で幸一は大好きな地酒の雪ノ下大吟醸を冷やで呑んだ。
それぞれ好きな物を頼んで楽しい夜を満喫したのでした。


                                                                                 (つづく)