夏が来た。

長かった梅雨もやっと上がり、日射しが強い青空が空一杯に広がっていた。
トヨタのアルフアードは九州縦貫自動車道を軽快に南に向かって走っていた。
長谷川一家からお礼にと言う誘いを受けて、五味一家は純一の運転するこの車に揺られていたのでした。
10時頃、山川PAに入り、トイレ休憩をした。

「咲良ちゃん、コーヒーはどっちが良い?
冷たいの?それともホット?」

と純一が訊ねた。

「はい、私ホットのアメリカンが良いです。」

「解った。
ちょっと待ってて。」

蒼く何処までも高い空の下、気持ちよく木陰が出来たベンチで座ってコーヒーを飲んでいた。
突然、上から通信が降りて来た。

『咲良殿、すまぬが、今から純一殿にお願いして、阿蘇山に寄ってはくれぬか?』

「阿蘇山の何処に行けば良いのでしょうか?」

『阿蘇外輪山の大観峰の近くの阿蘇国造神社の拝殿で、頼みごとをしたいという神様がお待ちでな!』

「分かりました。
純一さんにお願いしてみます。」


トイレから戻った純一に訊ねた。

「純一さん出来れば阿蘇山で寄りたい神社があるのですが?
時間の余裕はありますか?」

「今日は、人吉温泉泊まりだから、阿蘇山の何処かで遊ぼうかと思っていたので、良いですよ。」

「じゃあ、菊水で降りて、菊池市を抜けて阿蘇スカイラインで大観峰に向かっていただけますか?
大観峰の近くの阿蘇外輪山の麓の神社に寄りたいのです。」

「了解です。」

純一の運転する車は順調に走行して阿蘇スカイラインを通って外輪山の有名な展望台の大観峰に到着した。
売店の近くの駐車場に車を止めて、全員で少し歩いて眺望の良い展望台を目指して歩き出した。
空はよく晴れて雲1つ無くて暑かった。

  大観峰

1回りして売店の食堂に入り、簡単な昼食を済ませて、一の宮町手野の外輪山の麓にある国造神社(こくぞうじんじゃ)に向かった。
阿蘇ミルクロードの途中から南に降りて行くと、大きな杉の林の中に国造神社は鎮座されていた。
駐車場に車を止めて、山水の流れる橋を渡って階段を登ると、国造神社の拝殿があった。
みんなで、三拍手してこの神社に居られる神様に御挨拶をした。

       国造神社

挨拶が終ると、右手横の広場の方に咲良は回って行った。
丁度拝殿の横にたたずみ、拝殿の上を眺めていたが、急にニ礼三拍手一礼して畏まった。
何が興ったのか分からない他の5人はただ、咲良の様子を眺めているだけでした。
咲良が通信を皆に取り継ぎ始めた。

『よく来てくれた。
私はこの国造神社を陣場とする地乃系統神で、地乃世界之大神の次男神、末代日乃王天之大神である。
何時も咲良殿を指導している上義姫之大神の夫神である。
実は、そなた達に頼みたいことがあって、ここに寄ってもらった。
人吉で一人の呪縛霊を救済して貰いたいのだ。
この男は、我々龍体神の地球管理神界会議々長の道城義則之大神を信奉する者で、一昔、その人吉で、ある新興宗教に入信していたが、教会の教えに意義を唱え、道城義則之大神様を称えて、教会の信者の怒りをかい、合法的な方法で命を奪われ、人吉駅の前のある旅館に呪縛霊となって住み着き、夜毎宿泊客の枕元に骸骨の姿を観せて、驚かせている。
客の苦情で、霊能者等に徐霊されて、今は人吉城跡に移っているようだが、この者は真の道城殿の信奉者である。
道城殿がそのことを知って、自分の下で神化人霊として抱えたいと、望まれていて、どうしても、救済して人霊界に連れ帰りたいとの申し出があった。
その為には、手助けする生宮(人間)の力が必要なんだ。
魂救済担当神の玉依姫殿だけで救済は出来ない、同時に手助けする生宮がいなければ、救済は叶わ無いと言う根元神規が存在していて、そのお役をそなた達に頼みたいのだ。
どうだろう?
出来るか?』

「上義姫様の御指導を頂ければ、努力致します。」

『それでは宜しく頼む。
そのミタマの名は益田益次郎(ますだえきじろう)と申す。
人吉のそなた達の宿泊する宿に訪ねて来るであろう。よしなにな!』

                                                                      (つづく)