②  二つ目の殺人



この時は梅雨のしと降る雨が激しい朝の通勤時間帯だった。

星野安治は何時ものように地下鉄三田線線の御成門駅のA2出入り口を出て、折り畳み傘を広げて歩き出した時であった。前からドンと男にぶつかられた。

その瞬間左胸に衝撃が走って息が出来ない傷みを感じてその場に倒れ込んだ。


左胸を押さえて、通行人に助けを求めたが、声も出なかった。
ただ、傘を持った左手だけが何かを訴えるように動いていた。
始めは倒れた星野を避けていた通行人が何人目かの人が雨に流れ出しているおびただしい血痕を見て、慌てて声をあげた。

「あっ!  血が。

大変だ!誰か救急車を呼んでくれ!」



という声にすぐ人垣が出来て、その一人が、

「局長!星野局長!  どうしたのですか?  大丈夫ですか?」

と彼の部下らしき人が星野を抱き上げた。
しかし、すでに星野は気を失っていて、何の返事もしなかった。

15分後救急車を来た時は、既に遅く、星野安治は胸を鋭利な刺身包丁みたいな刃物で心臓をひとつきにされて出血多量で、絶命していた。
凶器は残されていなくて、犯人が持ち帰ったようだった。
知らせを聞いて、仁志捜査一課長達が現場に急行した時は、鑑識班が捜査中だったが、雨の為に証拠品に乏しく、監視カメラの映像しかなくて、それも雨粒の影響で、鮮明度が悪かったが、地下鉄や山手線の最寄の駅に向かう道路や商店の全ての監視カメラの記録を押収して解析の努力を鑑識課が全力をあげて行ったのでした。
その結果、仁志課長が自由通信社の3人の更迭者の残りの2人の写真と見比べさせていたのが効をそうして、国鉄山手線の新橋駅放免に行くブルーのカッパ姿の一人の男を見つけたのでした。
その男を追跡してカメラの記録を調べて、その小山健一と思える男が新橋駅の便所で雨ガッパを脱ぎ捨てて、山手線で池袋駅まで行ったことを突き止めたのでした。
新橋駅の公衆便所から、ブルーの雨ガッパと星野安治の血痕が着いた刃渡り25センチの刺身包丁が発見されて、指紋から、小山健一が犯人と断定して指名手配したのでした。

この状態を懸念した真ちゃんは、千津ちゃんに神合わせをさせて、後一人の自由通信社の罷免者の池沢道夫の動向を霊視させたのでした。
しかし、千津ちゃんの能力は生きた人間が目の前にいなくては、遠くの何処にいるかも不明な人間の動向を霊視することは出来ませんでした。

仁志課長がハッパをかけて捜査一課の課員達は、フル活動をして、小山健一を追ったのでした。

その頃、深大寺の境内で、二人の男が立ち話をしていた。
小山健一と池沢道夫だった。
二人は巧な変相をして、手配写真では、本人と気付かない程の変わりようだった。

「俺は約束通り星野を殺ってやったぞ、権藤も見事に仕事をして死んで行った、今度はお前の番だ。

しかし、奴は難しいぞ、SPも数名付いているようだしなぁ。」


「ああ、昨日それとなく調べたら、4人付いていた。

国会議事堂近くを歩いていたら、職務質問を受けたが、何とかかわすことが出来たから良かったが、肝が冷えたよ、ばれるのではないかとね。」







「どうして近付くかだな?」

「奴は忙しいから、チャンスはあると思うが、官邸を余りでないからな!」

「道具は何を使うつもりだね?」

「俺の学校の後輩の過激派人に頼んで手榴弾を用意させているのだが、それに自爆装置で車に突っ込むことも考えている。」

「そうか、お前が見事に奴を殺したら、俺も二人の後を追うよ。

すぐ死のうと思ったが、お前一人では少し荷が重そうだったから、何か加勢をしてやろうと思ったんだ。

死ぬのは何時でも出来るからな。」


「そうか、それでは、何か手伝って貰うことにするか。」


「俺は大学でパソコンを習っていて、ハッカーも出来るから、奴の行動予定をそっと覗いてやろうか?」

「そうかい、それは助かる。

頼むよ。

その結果を見て予定をたてよう。
今から俺は過激派の連中に会いに行くつもりだから、宜しく頼む。」

「判った。アジトで待ってる。」

                                                                (つづく)