②  合同捜査会議



合同捜査会議が行われていた。
真ん中の雛壇には中心に熊川審議官が、左右に八木公安部長と仁志捜査一課長が陣取り、その部下が数名座っていた。
対面して、公安部員、捜査一課員、鑑識課員とまだ発足前で部員が真ちゃんと千津ちゃんだけの神霊捜査課の2人も隅のパイプ椅子に座って参加していた。
総勢ざっと見渡して、凡そ100名以上はいた。  

「今から世田谷代田林会長宅爆破事件の合同捜査会議を開始します。
今回は熊川審議官が合同捜査本部長となられて指揮をとられますので、皆さん鋭意努力して事件解決に努力されますようにお願いいたします。」

と仁志捜査一課長が立って告げた。
続いて熊川本部長が挨拶をした。

「我が警視庁の面子にかけても今回の爆破事件の犯人逮捕解決をすみやかにお願いする。
もうすぐオリンピックが始まるというこの非常時であるから、最大の努力を頼む!  以上。」

「事件の状況と判明していることを報告してくれ。」

と仁志捜査一課長が言った。
捜査課員が一人起立して、

「ハイ! 一昨日、7月2日の早朝午前2時29分に世田谷区代田5丁目の林彰洋(80才)宅が爆破されて、3人が被害を受けて、その内の1人が死亡、2人が重、自宅は崩壊したという 事件です。
林彰洋氏は皆さん御存知の元総理大臣経験者で、現在、この7月24日開催予定の2020年東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会の会長でした。
死因は爆発物による殺傷出血ショック死とのことです。」





他の課員が立って、

「爆発物に関する情報ですが、鑑識の結果、築20年の日本書院作り木造家屋の床下に仕掛けられたプラスチック爆弾によるものと視られています。」



             プラスチック爆弾


「その後の調査報告は?誰か居ないか?」

「はい、事件現場の近くの防犯カメラの解析から、当夜2時15分頃にアルフアコンビニの前を現場方面に向かい、その20分後に戻って来た車が1台いましたが、その車所有者は右翼団体の同神会のメンバーの所有している車と解り、現在任意同行をして取り調べをしている最中です。」

「科捜研からの報告では、このプラスチック爆弾は中東のイスラム国がテロ行為に使用するものと同じだということが解りました。」

と鑑識課員が報告しした。

「神霊捜査課の神下といいます。

五島先生の所の宮でのお伺いでは、人霊、思凝霊、黒蛇、テロ、原発、地震、電波SNSに気を付けるようにという通信を得ておりますので、報告しておきます。」


「フン!何だ!神の御告げなんかどうでもいい!」

と、熊川本部長が笑った。
慌てて、横にいた八木公安部長が何か耳うちを熊川本部長にした。
途端に熊川本部長が立ち上がり、

「全員、今の、エーっと、そこの君、名前は神、神下君だったかね?  
彼女の話は大事だから、よく聞いて注意するように、いいか!」

その時緊急庁内放送のブザーが鳴り渡った。

「緊急連絡! 緊急連絡!  事件発生 、事件発生、
九州川内原発で爆発事件発生。  九州川内原子力発電所で爆発事件が発生。」

会議室が騒然となった。
その時、熊川本部長の所の秘書官が会議室に入ってきて何かの報告用紙を本部長に渡した。
それに目を通した熊川本部長は、

「ちょっと聞いて欲しい、今、川内原発の爆発事故はテロということが判明したとの連絡が鹿児島県警から入ったことと、成田、関空、名古屋セントラル空港で、それぞれ、不法入国しようとしたアラブ人を逮捕したという情報が来た、しかし、まだ、すり抜けて入国した可能性があるということで、全国で警備態勢強化するようにとの警視総監指令が出されたということだ。
全員要注意のこと!」

「本部長、川内原発がテロということですが、どんな様子だったのか?教えて下さい。」

熊川本部長から報告用紙を受け取った八木公安部長が立って、

「この報告によると、日本過激派がイスラム国と何らかの関係を持ったと思われ、川内原発の下請け業者に潜り込んだ過激派の男が、自爆する前に手榴弾を投げて、冷却水循環装置の爆発を狙い、自分は入所準備室で自爆して、同じ場所にいた5人が、巻き込まれて爆死したとのことだ。

原発の冷却水循環装置の破損は大きく、今は予備の冷却水循環装置を稼働させているということである。

自爆装置を調べて、イスラム国が使う自爆装置を使用していたことが判ったそうだ!
以上。」



 手榴弾

                                                                 

                                                                          (つづく)