P.49.

『神の言葉を神読、サニワすることは難しいことです。 
ある宗教団体では、こんなことがありました。
教団員の息子が、ある日、漁に出て遭難しました。
捜索隊が出て探さしたのですが見つかりません、
十日以上過ぎても発見出来ず、捜索を打ち切るかどうかということになり困った家族は、教祖に伺いを立てました。 
すると、神託が降りました。

「死んでおらん」

一言だけでした。
これを聴いた家族は大喜びして、私財を投げ打つて自費で捜索を続けましたが、見つかりませんでした。
家族はこの神託を自分達の都合の良い希望に合つたことに受け取つたのですが、

「もう死んでしまつて、この世にはいない」

と解釈も出来たのです。 
この様に神の言葉は解釈しだいでは、どの様にでも変わるので、しつかりした神読師が、長い鍛練
を積んで、何度も取り次を検証して解釈しなければ、ちょつとでも気をゆるめると、すぐ偽神達が入り込んで来ます。 
ある神が、あなた達神人に、以前、言つたことを覚えていますか? 

「取り次は八人、サニワは一人」

と、 この様に取り次役は何人も現れますが、本当のサニワ師は数少ないのです。
代が変わって神読師が国替えになると、後を継ぐ者しだいでは、偽神や動物霊達の餌食となつてしまいます。動物霊と言つて軽く見ていると大変なことになります。 
金毛九尾(※150)と言つて恐ろし化け者等もいました。 

     金毛九州尾神

またある動物霊等は神のふりをして、人間に、自分の好物をたくさん供えさせる為に、その人間の望むことを
叶えてやろうとします。
人間が金を欲しがれば、ドサツと与えます。
本当は、その人間の子供や孫達三代が、一生かかつて得る金を、その人に一度にまとめて与えるのです。
だからその人は大金持ちにはなります。
喜んでその動物霊の好むものをいつぱい供えますが、子や孫達の人生は目に余る事となります。
  
神祭の姫を含めて、霊感のある生宮が、神からの取り次ぎをする方法は、色々ありますが、その生宮の質とか波長とかが、神通する相手の神の違い等によつても変わります。その相手が動物霊や、人霊だつたり偽神だつたり、真の神であつてもその神の属する神界の違いによつても異なりがあります。
通信を受けた生宮の表現のしかたも異なります。
聴こえた声を、声として出す者、字に書く者、字が見えて読む者、字を書く者、数字の羅列が見える者、光とか色しか見えない者、姿や風景が見える者、中には生宮の動きを利用して通信を送る者が憑依(※151)して表に出てくる等々、多岐に渡ります。
その他に自動書記(※152)と言つて、気を失つたり眠ったりしたまま勝手に手が動いて、字を書くものがありますが、この場合は右手で書く場合は、真の神の通信でないことが多いということは、もう五島殿は経験上から知つているでしょう。
また、取り次ぎ役は、神託を終えると、全て何を取り次いだのかを忘れてしまうのが本当で、もし、その中身を知つているとすれば、その神託は疑う必要があります。
神託として出たのではなく取り次ぎ人の知識や考えとして出た場合があるからです。
それから神は、二度同じ事を言わないことになつていますから、取り次ぎに出た言葉は必ず記録しておく必要があります。
今日の取り次ぎで出た神託と関係のあることが、何年も経つて、突然出てくる事項に関係することもあります。
全体の流れを良く見ておく必要があります。
そうすれば流れに関係ない事柄が見えてきたりします。
その時は、後日に関係することか、偽神達の言葉かが判つて来ます。
この間、犬山神社であなた方神人と出会う迄は、姉のフクを除くと誰一人として、本当の神祭姫は、この世に現れて来ませんでした。
あの時、私が、思わず「チキ」と呼んだことを覚えていますか?
「チキ」とは、ずつと、ずつと昔、根元様によつて神線を全部切られた後も、たつた一人、その神線を守つていて、ついに、赤目牛霊団によつて、北海道のルベシベ川迄、追い詰められて殺された最後の神祭の姫の名前です。
私はあの時、あの取り次ぎ役の娘にチキの面影を見て、思わず呼んでしまつたのです。

 今日はほんとうに良い天気ですね。五島殿、ここの素晴らしい空気をいつぱい味わって行つて下さいね。』

                  (つづく)

 《用語解説》

※150)金毛九尾(きんもうきゅうび)……九つの尾をもつた金色のキツネの化物[かむなから神業報告書
                                                                                よ り]
※151)憑依(ひようい)………よりすがること、よりどころとすること、霊等がのりうつること[広辞苑
                                                           より]
※152)自動書記(じどうしょき)……フロイトの潜在意識説に基づいて筆の赴くに任せる書記法[広辞苑
                                                                        より]