「……何だなんだ、また貴方ですか。僕ァそんなに暇じゃないんですがね──この後も資格の勉強があるんですから、手短に願いますよ。あぁ忙しいいそがしい」
このところ自宅での独立開業を狙っている悪友キヨシが、電話の向こうで言う。
──や、悪いね。今日はちょっと聞きたいことがあってさ。君ね……単刀直入に言うけど、PCとか携帯にさ、音声変換ソフトみたいなの持ってない? 自分の声を女声に変換できるようなやつとかさ。
「はァ? そんなもの持ってませんけど」
けっ、悪びれもせずに。どんな手段を使ったかしらんが、お前なぁ。さっき声を変えて俺に電話しただろう?
「え、ええっ。彼女から電話あったんですか? そりゃあよかった! おめでとうございます」
うんうん。あのな。はらださんはあんな声じゃねえんだよ! もっとくぐもった田舎臭い、野暮ったい声なんだ。あれは彼女じゃねえ。四の五の言うな、もうネタは挙がってんだ。吐け、いいから吐け、はくんだッ!
──それでも五分ぐらいは奴、シラを切り通しただろうか。ついに耐えかねて、笑い出した。
「……ハーッハッハッハ! よく気づきましたね。褒めてあげます。いやね、僕も毎日忙しいんですが、寂しくてさびしくてこのままだと早晩死んでしまうであろうウサギのようなスミダさんのために、わざわざ時間を割いて一芝居打ってあげたという次第ですよ」
やっぱりか。畜生、毎度まいどバカにしやがって! 人の気持ちを踏みにじりよって──てか、よく考えたらお前さ、そんなドッキリを仕掛けるってことは、どうせはらださん本人からの返事は100%来てるはずがない、って確信があったってことだよな?
「まぁ、そういうことになりますかね。完璧(パーフェクト)超人である僕には森羅万象すべてお見通しなんですよ。いやー、本当にスミダさんって、からかい甲斐のある人ですね」
…………。俺とはハナから超人強度が違うとな。
こ、こ、この人でなし! 鬼ーーーーッ!!
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