某月某日、土曜日。某緑色っぽいコンビニの駐車場付近にて、上着のポケットから紙切れを出しつしまいつ、そわそわした様子で辺りを窺う不審者(中年男性、小太り、メガネ着用)の姿があった。
予定通りなら、17時過ぎ。裏口ではなく、正面ドアから。それくらいの調べは当然ついている。伊達に幼少期から名探偵に憧れてきたわけではないのだ。
こういう時はやはり、直筆に限る。また、その文面もあまり深く思い悩まず勢いで押し切るが吉であろうと、一発勝負でついさっき書き上げた。
……そして、17時12分。憧れのひとは、一人で出てきた。迎えもいないようだ。私服の彼女。派手なところのないパンツスタイル。バス停へ向かうであろうその背中を僕は小走りで追いかけ、隣に並びかけ──
「こ、こここここれ。あっああとぁとでいいんでょ読んでくだちい」
二つ折りにしたメモを、明らかに目が点な彼女の引っ込めかけた手に押し付けるように渡し、すぐさま踵を返した。そしてさっきのコンビニ店内に入ると、返す刀で500mlのストロング系缶チューハイを買い、歩きながら飲み気を落ち着けた。
──やった。やってやった。この意気地なし野郎がとうとうやったのだ。体の奥から湧き上がるマグマのような達成感、それをいち早く誰かと共有したくてたまらず、悪友キヨシに電話を入れた。
「……ほぉ。有言実行とは、なかなかやる。貴方が人生で初めて勇気を出した瞬間ですね。おめでとうございます」
──お前さぁ。俺だってありったけの勇気を振り絞ったんだぞ、もっと素直に褒めることはできんのかね?
「いえね、告白したって点は認めますけど、スミダさんが、でしょ? 絶っ対うまくいくわけないんで。その、はらださん──でしたっけ? 今頃きっと震え上がって夕食も喉を通らず、三日三晩は寝込むでしょうね」
うるさい、黙れ! 振られるかどうかはまだわからん、今夜は祝杯だ! ヤケ酒か!
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