昔、
猟師が山で熊を罠にかけた。
ところが熊は罠を破って逃げ出した。
罠を破るとき熊は怪我をしたのか
前脚を引きずるようにして歩いていく。
とろこどころに血の跡を残しながら、
手負いの熊は気が荒いので、
猟師は用心しながら熊の後をつけた。
熊はのっそりのっそり下ると、
湯の湧き出ているところに来て、
傷口を洗い流した。
熊は、
いっときほど傷口を洗ったりなめたりしているが、
そのうちに、
のっそりと山へ帰って行った。
猟師もあちこちに傷をもらっていた。
けものと闘い、
藪の中を駆け回ったものであるから。
猟師は、
熊の傷を洗った湯に自分も浸かってみた。
すると傷口がどんどん良くなっていくのを感じた。
そこで猟師はここに移り住んで、
温泉を開いたという。
手洗い場がつまって、
今では寺湯と呼ばれているのだと。
信州の民話伝説集成 北信編より
野沢温泉村の旅館街にあります。
細い坂道を登っていきますので
途中で車を止めていきました。
外湯めぐりで入られる方と数人すれ違いました。
横落駐車場から歩いて6分くらいの所にあります