ボトックスのウソ?ホント? よくある疑問にお答えします。
先日、ボトックスビスタ®に「咬筋膨隆(いわゆるエラ)」の適応が追加されました。これまで美容目的では眉間や目尻の表情ジワに承認されていたボトックスビスタ®ですが、今回新たに咬筋への治療が加わったことになります。ボトックスは美容医療ではとても身近な治療になりましたが、診察をしていると「これって本当ですか?」と聞かれることがまだまだあります。今回は、患者さまからよく聞かれるボトックスにまつわる疑問を3つ、医学的な根拠も交えながらお話しします。Q1. ボトックスは打ち続けると、抗体ができて効かなくなる?A. 可能性はありますが、実際にはかなり稀です。ボツリヌストキシン製剤を繰り返し使用することで「中和抗体」がつくられ、効果が弱くなることがあります。ただし、その頻度はとても低いことがわかっています。ボトックス(onabotulinumtoxinA)の臨床試験をまとめた報告では、約5,900人のうち中和抗体が確認されたのは0.5%。さらに、抗体ができたことで実際に効きにくくなったと判断された方は、その中でもごく一部でした。また、この数字には、美容目的よりもはるかに多い量を使用する治療も含まれています。美容医療で使用するような比較的少ない投与量では、抗体によって効かなくなるケースは非常に稀と考えられています。「ボトックスを続けていると、そのうち抗体ができて効かなくなる」と過度に心配する必要はありません。Q2. ボトックスを打った当日は、お風呂に入っちゃダメ?A. 入浴したからといって、ボトックスの効果がなくなるわけではありません。「ボトックスは熱に弱いから、当日はお風呂に入ってはいけない」と聞いたことがある方もいるかもしれません。確かに、ボツリヌストキシン製剤は保管時の温度管理が重要な医薬品です。適切な環境で保管・輸送し、正しく管理された製剤を使用することはとても大切です。でも、それは注射する前の製剤管理の話です。注射したあとにお風呂に入って体温が少し上がったからといって、体内に投与されたボトックスが熱で失活してしまう、という根拠はありません。ですので私は、通常の入浴まで禁止する必要はないと考えています。ただし、注射直後は針を刺した部分に赤みや腫れ、内出血が出ることがあります。長時間の熱いお風呂やサウナ、激しい運動など、血流が大きく増えるようなことは当日は控えめに。「お風呂に入るとボトックスが熱でダメになる」わけではありません。Q3. ボトックスは一度始めたら、一生続けないといけない?A. いいえ。やめても大丈夫です。「一度始めたら、ずっと打ち続けないといけないんですか?」これは診察でもよく聞かれる質問です。ボトックスは、続けているうちに筋肉のボリュームや働きが少しずつ変化することがあります。そのため、治療を続けている方の中には、最初の頃よりも少ない量でよくなったり、施術の間隔をあけられるようになったりする方もいます。一方で、顔は年齢とともに変化します。骨や脂肪、靱帯、皮膚などの支持構造が変化すると、それまでと同じようにボトックスを打つことが必ずしも最適とは限りません。筋肉の働きだけではなく、ボリュームの減少が気になるようになれば、ヒアルロン酸など別の治療を組み合わせたほうが自然なこともあります。だから私は、「ボトックスは一生続けなければならない治療」だとは考えていません。続けたければ続ける。少し間隔をあけてもいい。一度お休みしてもいい。美容医療は、ずっと続けることが目的ではありません。そのときのお顔の状態を見ながら、自分がやりたいと思ったタイミングで治療を選べばいいと、私は患者さまにお伝えしています。ボトックスはシンプルな治療に見えますが、どこに、どのくらい、どのタイミングで使うかによって仕上がりは変わります。そして、続け方にも「これが正解」という一つの答えがあるわけではありません。必要なときに、必要な治療を。ボトックスとも美容医療とも、無理なく上手に付き合っていただけたらと思います