「…この、悪魔め…っ」
血走った目でオレを睨み付けるこの男
こうなったのは、自業自得だというのに、まだ足掻くか…
「私を悪魔とは心外ですね。ビジネスに天使も悪魔もないと、私は思っていますが、それに、私を悪魔だと仰るのなら、私を悪魔にさせたのは、あなただ」
ゆったりと背もたれに身体を預け、脚を組み、その男の顔を見た
無表情になると、自分がどう見られるか、嫌と言うほどに理解している
青ざめていくその男に、情けはかけない
「さぁ、どうされますか?Mr.…?」
この書類にサインをして、多少なりとも救われるか、このまま地獄に堕ちるか
好きな方を選べばいいさ
どちらにしても、こちらに損はない
「お疲れ様でした、義一さん」
契約書にサインさせたその書類を島岡に押し付け、車に乗り込んだ
「ああ…」
シートに体を沈ませ、目を閉じた
悪魔、か…
そんな言葉、心にも響かない
ビジネスだ、情は禁物
言いたければ言ってるがいいさ
ただ、どうしてだろうな
無性に、託生に会いたい…
あの、どこまでも純粋で無垢な魂も持つ、奇跡の存在に
『ギイ…』
名前を呼ばれるだけで、黒々とした心の中に一筋の光が指す
『崎 義一』と言う冷酷非道な男から、『葉山 託生』を愛するただの『崎 義一』に戻してくれる、唯一の人
会いたい
会って抱き締めたい
恋い焦がれるほどに、思いは強くなっていく
側にいたい
側にいてほしい
多分、託生がいなかったら、オレは中身が空っぽの、ただの『人形』だっただろう…
託生と出会えて、よかった…
オレはまだ、『人間』でいられる
「お疲れ様でした、よい週末を、ギイ」
「ああ、島岡もな」
ペントハウスの前で車を降り、ドアに向かって歩きながら、懐からモバイルを取りだし、愛しい人の声を聞くために画面をタップする
『もしもし、ギイ?』
2コールも鳴らないうちに電話に出た恋人に、頬が緩む
エレベーターに乗り込み、最上階へのボタンを押す
「託生、今何してた?」
『ギイからの電話、待ってた』
「待たせてごめんな、仕事が立て込んでて」
『大丈夫、分かってるから』
託生の「大丈夫」に胸が痛む
どれだけ我慢させてるんだ、オレ…っ
堪らず、モバイルを握り締めた
「託生、会いたい…」
おもわずもれた囁きに、恋人の優しい声が帰ってくる
『ぼくも会いたい、ギイ…』
「たく…」
『だから、早く帰ってきて』
「え…?」
『ぼく、お腹空いちゃった。だから早く帰ってきて。ギイの分、食べちゃうぞ!』
まさか…っ
「たく…み、今、どこ…?」
『ふふ、ニューヨークのギイの部屋。だから、早く帰ってきて』
「…っ」
オレは、エレベーターの表示を見上げ、後僅かで最上階に着くのを確認し、逸る気持ちを押さえながら、モバイルを耳に当てた
「もう着くから」
『うん、エレベーターの音、聞こえてる』
耳の良い恋人の嬉しそうな声に、気持ちが逸る
もうすぐ愛しい人を抱き締める事ができる
エレベーターのドアがあき、エレベーターホールを駆け抜け、ドアを開けると、そこに微笑む託生がいた
「おかえりなさい、ギイ」
「ただいま、託生」
さらうように託生の腕を引き、腰に腕を回し、その華奢な身体を抱き締めた
「どうしたんだよ、お前…」
オレの背中に腕を回し、頬をオレの胸に沿わせ、身体を預けてきた
「ふふ、ギイをビックリさせたくて、島岡さんに予定を聞いて、来ちゃった」
ビックリした?と、いたずらっ子のような目をしてオレを見上げてきた託生
その見上げる目に、オレの中の熱が上がる
「…っ、どこまでオレを骨抜きにさせる気だよ、お前…」
「え…?」
「愛してるよ、託生…」
照れたように微笑みながら、オレを見上げて
「…ぼくも、愛してる…」
小さく返してくれた囁きに、愛しさが込み上げる
託生の頬に両手を沿わせ、薄く開く口唇をオレのと合わせ、口内に舌を潜り込ませ、託生の舌と絡ませながら、貪り続けた――…
託生
託生
側にいて
オレの側に
オレは、お前の前では『人間』でいたいんだ
だから、ずっと側にいて
オレを、離さないでくれ
託生
その手を、離さないでくれ
血走った目でオレを睨み付けるこの男
こうなったのは、自業自得だというのに、まだ足掻くか…
「私を悪魔とは心外ですね。ビジネスに天使も悪魔もないと、私は思っていますが、それに、私を悪魔だと仰るのなら、私を悪魔にさせたのは、あなただ」
ゆったりと背もたれに身体を預け、脚を組み、その男の顔を見た
無表情になると、自分がどう見られるか、嫌と言うほどに理解している
青ざめていくその男に、情けはかけない
「さぁ、どうされますか?Mr.…?」
この書類にサインをして、多少なりとも救われるか、このまま地獄に堕ちるか
好きな方を選べばいいさ
どちらにしても、こちらに損はない
「お疲れ様でした、義一さん」
契約書にサインさせたその書類を島岡に押し付け、車に乗り込んだ
「ああ…」
シートに体を沈ませ、目を閉じた
悪魔、か…
そんな言葉、心にも響かない
ビジネスだ、情は禁物
言いたければ言ってるがいいさ
ただ、どうしてだろうな
無性に、託生に会いたい…
あの、どこまでも純粋で無垢な魂も持つ、奇跡の存在に
『ギイ…』
名前を呼ばれるだけで、黒々とした心の中に一筋の光が指す
『崎 義一』と言う冷酷非道な男から、『葉山 託生』を愛するただの『崎 義一』に戻してくれる、唯一の人
会いたい
会って抱き締めたい
恋い焦がれるほどに、思いは強くなっていく
側にいたい
側にいてほしい
多分、託生がいなかったら、オレは中身が空っぽの、ただの『人形』だっただろう…
託生と出会えて、よかった…
オレはまだ、『人間』でいられる
「お疲れ様でした、よい週末を、ギイ」
「ああ、島岡もな」
ペントハウスの前で車を降り、ドアに向かって歩きながら、懐からモバイルを取りだし、愛しい人の声を聞くために画面をタップする
『もしもし、ギイ?』
2コールも鳴らないうちに電話に出た恋人に、頬が緩む
エレベーターに乗り込み、最上階へのボタンを押す
「託生、今何してた?」
『ギイからの電話、待ってた』
「待たせてごめんな、仕事が立て込んでて」
『大丈夫、分かってるから』
託生の「大丈夫」に胸が痛む
どれだけ我慢させてるんだ、オレ…っ
堪らず、モバイルを握り締めた
「託生、会いたい…」
おもわずもれた囁きに、恋人の優しい声が帰ってくる
『ぼくも会いたい、ギイ…』
「たく…」
『だから、早く帰ってきて』
「え…?」
『ぼく、お腹空いちゃった。だから早く帰ってきて。ギイの分、食べちゃうぞ!』
まさか…っ
「たく…み、今、どこ…?」
『ふふ、ニューヨークのギイの部屋。だから、早く帰ってきて』
「…っ」
オレは、エレベーターの表示を見上げ、後僅かで最上階に着くのを確認し、逸る気持ちを押さえながら、モバイルを耳に当てた
「もう着くから」
『うん、エレベーターの音、聞こえてる』
耳の良い恋人の嬉しそうな声に、気持ちが逸る
もうすぐ愛しい人を抱き締める事ができる
エレベーターのドアがあき、エレベーターホールを駆け抜け、ドアを開けると、そこに微笑む託生がいた
「おかえりなさい、ギイ」
「ただいま、託生」
さらうように託生の腕を引き、腰に腕を回し、その華奢な身体を抱き締めた
「どうしたんだよ、お前…」
オレの背中に腕を回し、頬をオレの胸に沿わせ、身体を預けてきた
「ふふ、ギイをビックリさせたくて、島岡さんに予定を聞いて、来ちゃった」
ビックリした?と、いたずらっ子のような目をしてオレを見上げてきた託生
その見上げる目に、オレの中の熱が上がる
「…っ、どこまでオレを骨抜きにさせる気だよ、お前…」
「え…?」
「愛してるよ、託生…」
照れたように微笑みながら、オレを見上げて
「…ぼくも、愛してる…」
小さく返してくれた囁きに、愛しさが込み上げる
託生の頬に両手を沿わせ、薄く開く口唇をオレのと合わせ、口内に舌を潜り込ませ、託生の舌と絡ませながら、貪り続けた――…
託生
託生
側にいて
オレの側に
オレは、お前の前では『人間』でいたいんだ
だから、ずっと側にいて
オレを、離さないでくれ
託生
その手を、離さないでくれ