渡せない...渡せない...無理だ、こんなの。
?「もう由依さん!早く!」
無理矢理私の手を引っ張っているのは大切な後輩"森田ひかる"だ。
ひかるは努力家で私たちが帰る時にもレッスン室に残り、鏡の前で練習をしている。
由依「無理無理無理無理」
ひかる「理佐さんに渡さなくていいんですか!」
"理佐"というのは私が密かに想いを寄せている同期だ。初期から傍にいてくれて今では大切なシンメ。
由依「もういいよ!ひかるにあげる!」
ひかる「嬉しいですけど...それはダメです!! 」
私のことが大好きだからすぐに受け取るかと思ったのに拒否された。
ひかる「本命チョコは本当に好きな人に渡すべきです。だから私も、」
由依「え?」
ひかるはダンス着のポケットから何やら袋詰めを取り出した。
ひかる「由依さん、大好きです」
小さいハート型のチョコが何個も入っている。
由依「ひかる...」
まさかその意味で好きだったんなんて知らなかった。ごめん。ひかる、気づけなくて。
ひかる「まぁ、呆気なく振られましたけどね笑」
私最低だ。ひかるは私の事好きなのに私は一方的に相談ばっかしてて、、
由依「ごめん、ひかる」
ひかる「いいですよもう笑」
へらへらと笑っているが悲しい笑顔だ。
ひかる「ほら、渡してきてください」
由依「うん...」
その後だと、反抗できないじゃないか。
ひかる「私、応援してますから。誰よりも」
由依「ありがとう」
私の手をぎゅっと握り、お辞儀をしてからほかのメンバーの元へと向かった。
私も正直に渡さないとな...
理佐の方を向くと、帰る準備をしている。
由依「よし、」
深呼吸をして、理佐の元へと歩く。
頑張れ、頑張るんだ。小林由依、行くぞ!!
由依「り、理佐!」
理佐「あ、由依。どうしたの?」
幼い顔立ち、好きだなぁ…って違う!!
由依「一緒に帰らない、?」
理佐「うん、いいよ」
考える時間もなく即答でOKされた。
嬉しすぎる。
急いで帰る準備をする。途中でひかると目が合い頑張れポーズをされた。
理佐「行こっか」
由依「うん!」
リュックを背負い手持ちバックを手に持った。
理佐の隣に並び、外に出ると一気に冷気を感じた
由依「寒っ...」
理佐「寒いね〜、あげるよ、カイロ」
ポケットからカイロを取り出し満面の笑顔で渡された。
あぁ、可愛い。子犬じゃん。
由依「ありがとう、寒くない?」
理佐「寒い、」
由依「え?笑、じゃあこれ使いなよ笑」
理佐「由依の手握るからいいよ」
由依「えっ?!/////」
理佐「あはは笑、冗談冗談」
由依「はー?笑、びっくりしたなもう...」
理佐がツボっている。そんなに笑えるのか?
理佐「そういえば、今日バレンタインデーだね。由依は誰かに本命チョコ渡したの?」
チャンス。行けるぞ。
由依「いや、まだだよ」
理佐「へぇ~、本命誰にも渡さないの?」
由依「ううん、渡すよ」
理佐「え、でももう帰ってるよ」
由依「今から渡すんだよ」
理佐「これから誰かと会うの?」
鈍感すぎでしょ。まったく、
少し人気がない道に入り、理佐の裾を掴んだ。
由依「理佐に、あげるの」
理佐「へ?////」
街灯に照れされた理佐の顔は少し紅潮している。
由依「はい、」
手持ちバックからチョコを取りだした。
理佐「私でいいの?本命なんか」
由依「うん、理佐しかダメなの」
あー、何を言っているんだ私は。
少し目が合い、ぎゅっと抱き締められる。
由依「えっ...」
理佐「偶然だね、私もだよ由依」
手持ちバックを取り上げられ何かを入れられた。
理佐「本命チョコ、入れといた」
由依「えっ、どうして、」
理佐「小林由依のことが好きだから」
由依「っ/////」
死んでしまう。そんなこと言われたら私やばいよ
理佐「私と付き合って?」
由依「うん、もちろん。...ねぇ理佐、夢じゃないよね、?」
理佐「これで起きなかったら夢じゃないよ」
理佐はそう言って私の手を引っ張り頬にちゅっとキスをした。
由依「/////」
理佐「どう?起きない?」
由依「うん、起きない...」
理佐「んふふ笑、じゃあ現実だ」
私の手を恋人繋ぎして再び歩きだした。
理佐「やっと手繋げた、これからよろしくね」
首を傾げ、ニコッと笑った。
いちいちドキドキしちゃう、高校生の頃は絶対にこの先恋なんかしないと思ってたのに。
由依「ばか...」
私は、理佐に聞こえない声でボソッと呟いた。