理佐said


うわああああああああ。


私は今、ものすごくむしゃくしゃしている。


理由は、幼馴染である平手友梨奈に年上の彼氏が出来たから。普通、幼馴染だから彼氏ぐらいできたっていいって思うかもだけど私は友梨奈のことが恋愛感情で好きだ。



それに、小さい頃から友梨奈のことを見てきたから好きな食べ物とか嫌いな食べ物全部答えられる。友梨奈のことを全て知っているのはきっと友梨奈の親御さんと私だけ。


まったく、私にこの前まで甘えてくれたのに、彼氏が出来てから私は1人のことが多い。


それによりによって、友梨奈の彼氏はすごくモテモテで顔がイケメンな颯斗先輩。
 

しかし、その人のある黒い噂が流れている。


昨日も一昨日も私の耳には必ず入ってくる。



?「颯斗先輩、めっちゃ嘘コクしてるんだって」


?「ね〜!被害あったの10人目だって」


ほら、今だって廊下を通っただけだ。


友梨奈はこんな噂が流れているの知ってるのかな...


ザワザワしている教室に入ると、窓際の席でスマホを見ながら顎に手を当て、眉を八の字にしている友梨奈がいた。


私は足を進め、友梨奈の前の席に座った。


友梨奈「あ、理佐。」


私が座った際に音が立ったのか、スマホから私に視線を向けてくれた。


理佐「そんな困り顔して、どうしたの?」


友梨奈「いや...颯斗先輩の既読がつかなくて、デート明日なのに...」


理佐「で、デート?!」


友梨奈「ちょ、理佐!しーっ!!」


私は思わず大きな声を出してしまい友梨奈は人差し指で自分の口を抑えている。


理佐「あ、ごめん笑」


友梨奈「まったく、みんなに聞こえてなかったから別に良いよ...」


理佐「ありがと。既読がつかないってスマホ無くしたんじゃない?」


友梨奈「そうなのかな...」  
 

友梨奈が下を俯いて落ち込んでいる。まったく、こんな顔私見たことないのに、、


ピコンッ!


友梨奈のスマホから小さな通知音が聞こえた。


友梨奈「あ!颯斗先輩からだ!!」


さっきの表情とは真逆に、満面な笑顔になった。


私は胸の奥の奥がチクチクと痛み、嫉妬心が湧いた。

いいな、颯斗先輩になりたい。


理佐「なんて?」


友梨奈「明日のデート時間変更できないかって」


理佐「へぇ〜、」


友梨奈はじっくりと画面を見ながら文字を打っていく。


?「颯斗先輩、まじでクズだよね」


1番前に座っていた女の子3人組がそのことについて話していた。


あーもう、タイミング悪すぎ。


友梨奈「え?どういうこと?」


スマホを机にコトッと置き、そのグループの方に話しかけた。


女1「なんか遊んでるらしいよ」 


友梨奈「遊んでる、?」


女1「うん、嘘の告白をして」


友梨奈「そんな...そんな訳ないじゃん!」


女2「本当だよ...私被害あったんだから...」


女1「隣のクラスの子も同じだよ」


友梨奈「えっ...」


友梨奈は衝撃を受けたためか、走って教室から出てしまった。


理佐「ちょっと友梨奈!」


女3「泣きそうになってたけどどうしたの?」


女1「それな、もしかして好きだったとか?」


理佐「ちがう、友梨奈はそんなチャラ男好きにならないから。」


女3「じゃあなんであんなに衝撃受けてたの?笑」


理佐「いやっ、あ、あれは...」


女2「ん?」


理佐「ほらぁ、人間って誰しも驚くじゃん?」


ごめん友梨奈、上手く誤魔化せない。


女3「なんじゃそりゃ笑」


理佐「まぁ、そういうことだよ!うん!!」



私は友梨奈を探しに逃げるように教室を去った。


友梨奈はどこに行ったんだろう...


図書館?いや、友梨奈は本を読むのが嫌いだ。


理科室?うーん、匂いが好きって言ってたけどなにもそこですることないし...


屋上...?私は今まで行ったことないしそもそも開いてるのかな...


私は確認しようと走って屋上へと向かった。


階段を登った先にあったのは屋上のドア。

ドアの横にはダンボールがいくつか置いてある。


それよりも、ドアが若干空いているのが不審だ。


誰か居んのかな...?



私はドアノブに手をかけ、外側へ開けると涼しい風が一気に吹き、まるで後ろへ押し倒れそうな勢いだった。


理佐「誰も...いないのか」


?「私のこと好きじゃなかったんですか?」


私は教室に戻ろうと、後ろ足を進めると、右手奥から声が聞こえきた。


私はその声ですぐに誰かわかった。

だって、小さい頃からずっと耳に住みついている声だから。

相手も、友梨奈より少し身長が大きい、私と同じぐらいの身長の人。それは、颯斗先輩だ。


私はバレないように、二人の会話に耳を傾けた。



友梨奈「なんでそんな...嘘だったなんて...」


颯斗「お前のことなんか好きになる訳ないだろ」


友梨奈「ひどい...颯斗先輩っ、」


颯斗「本気にしたのが悪いんだよ、お前ほんっとバカだな」

友梨奈「...っ、」


颯斗「バカだから騙しやすいって思ったんだよ笑、まじでゴミ、笑」


友梨奈「っ、嫌です、そんな私は本気だったのに」


颯斗「で?笑」 


友梨奈「え?」


颯斗「なにが言いたいの?」


友梨奈「好きです...」


颯斗「は?」


友梨奈「颯斗先輩のことが、好きです!」


友梨奈はまだその人のこと好きなの...。


颯斗「ごめん、まじで無理。これ以上俺の視界に入ってくんな」


友梨奈が泣きそうになっている。

私はプツンと何かが切れてしまい、私は気づけば颯斗先輩の胸ぐらを掴んでいた。


友梨奈「理佐?!」


颯斗「な、なんだお前...先輩に向かってこの態度?」


理佐「人の心を弄んで何が楽しい」


颯斗「あ?」


理佐「友梨奈を利用すんな!!」


私は先輩ってことを忘れ、怒鳴ってしまった。


颯斗「君は友梨奈の何なんだよ」


理佐「別に何だっていい。軽く友梨奈の名前を呼び捨てにしないで、」


颯斗「ごちゃごちゃごちゃごちゃうるせぇな」


私はこの人に突き飛ばされ、地面に尻もちをついてしまった。


友梨奈「っ、理佐!」


理佐「大丈夫、」


友梨奈がこっちに駆け寄ろうとしたため、私は止めた。


颯斗「お前らほんときもい。」


理佐「あんたがね。」


颯斗「は?」


私は立ち上がり、心の中で深呼吸をし、口を開いた。


理佐「たくさんの人を傷つけて、おまけにこんな事も言う先輩の方がよっぽど気持ち悪いですよ。顔が良いから許されるって思わないで。そんな人が友梨奈の彼氏なんて私は受け付けない、」



私は颯斗先輩に近寄り、耳元で声のトーンを低くし、こう言った。



理佐「何も知らないくせに、友梨奈に近寄らないで。友梨奈のこと傷つけていいのは私だけだから」


颯斗「は...?」


理解しきっていない颯斗先輩の目を見て、私はこう言った。


理佐「タメ口すいませんでした。今の友梨奈との会話録音したのでこれを放送で流したらどうなるんでしょうね?笑」


颯斗「た、頼む!!!それはやめてくれ!」


理佐「嫌なら、これ以上人の心で遊ばないことを約束してください」


颯斗「わ、分かったよ...」


理佐「もし、また誰かを傷つけたりしたら容赦なく流しますので、よろしくお願いします」


颯斗「っ...お、お前、お、覚えてろよ!」


目が笑っていない笑顔を向けると、怯えたように屋上から逃げて言った。


いくら、先輩だからって言い過ぎたかな...


理佐「あああああ、」


私は顔を手で覆った。


友梨奈「理佐...」


今まで生きてきた中で緊張した...


初対面なのにあんな言ったら怒られるし殴られるかもしれないのに、


理佐「...まだあの人のこと好き?」


友梨奈「...」


制服のスカートを手で握りしめて何か言いたそうな顔をしている。


私はそばにあるベンチに座り、待つことにした。


ん?


いや、言いたそうな顔じゃない。


友梨奈は、、泣いているんだ。


理佐「友梨奈?」


下を俯いて、声を殺しながらすすり声が聞こえた。


理佐「大丈夫?」


私は友梨奈に近づき、顔を覗いた。


友梨奈「こ...か...た


小さな声が聞こえた。


理佐「ん?」


友梨奈「怖かった、」


理佐「おぉ...」


目の前にいる大切な人は突然、私をぎゅっと抱きしめたその勢いがあまりにも強すぎて私は後ろへ倒れそうになった。


友梨奈「ありがとっ、...」


理佐「え?」


友梨奈「なんか理佐...かっこよかったっ」


友梨奈にそんな嬉しいこと初めて言われた.../////


理佐「普通だよ、友梨奈は大切だから」


友梨奈「ふふっ、理佐は自慢の幼なじみだよ」


幼なじみ...そっか、
 

理佐「...私も、友梨奈が幼なじみで良かったよ」


友梨奈「あは笑、」


理佐「んふふ笑」


なんだか気恥ずかしくなり、私たちは目を合わせながら笑った。


まだこの気持ちは封印して置こう。


私はそう思い、友梨奈の頭をそっと撫でた。


end.