由依said



私は先程、澤部先生にど叱られた。


よく分からない。でもテストで私が点数を落としたからだと思う。そんなの自己責任なのになんで怒られなければならないのだろう。



そして今、誰もいない教室で夕日を見ている。




?「どうしたの?小林さん」



前を見ると、頬杖しながらこっちを見ている私とは性格が正反対の渡邉理佐さんがいた。



渡邉さんはとてもクラスの中心的存在で、あまり喋ったことのないクラスメイト。



由依「べ、別に、渡邉さんには関係ないよ!」


理佐「んー、少しは相談した方が楽になるよ」


そんなことを言う渡邉さんの目はとても真剣だった。そのせいか私の口が勝手に動いていた。


由依「澤部先生に…怒られたの」


理佐「…澤部?あいつ相手にしない方がいいよ」


先生の事を呼び捨てにする人、初めて見た。


由依「え?」


理佐「私の部活の顧問なんだけどさ、澤部が部員を襲ったみたいなんだよね...」


渡邉さんって女子バレー部の部長だったっけ、女子バレー部の人はみんな可愛い。

けどあの澤部先生が襲うなんて、ありえない。


由依「でも、本当かまだ分からないじゃん?」


理佐「分からないけど、気をつけた方が良いよ」


由依「…うん。ありがと!そろそろ帰るね」


理佐「あ、うん。また明日、」


私はバイトがある事を忘れていたため、バックを持ち教室から飛び出した。



わっ!!



走っていると角から人が来ることに気づいておらずぶつかって転んでしまった。


由依「痛…」


?「走るなよ、廊下だぞ?」


聞き覚えのある声がし、後ろをむくと澤部先生がいた。


由依「あ、」


先程の事があってからか気まづい状況。


澤部「ほら、立てるか?」


澤部先生は私に歩み寄り手を差し伸べてくれた。


由依「だ、大丈夫です!失礼します」


私はその手を無視し、帰ろうとしたその時後ろから手を掴まれた。


由依「…な、なんですか?」


澤部先生「なぁ…ちょっといい?」


由依「え?ちょ、やめてくださいっ、」


腕を引っ張られ、すぐ側にあったトイレに押し倒された。


由依「ぃやっ、やめて…っ、ください!!」



澤部先生に馬乗りされていて、制服のボタンを外されている。


由依「…やだ…っ、やめてっ!」


澤部先生「助けを呼んだって無駄。ドンマイ」


顔を近づけられ、頬にキスをされた。


その瞬間、体全体がゾワゾワし鳥肌が立った。


由依「助けて...誰かっ!」



?「おい、何してんだよ」



するとトイレの入口から声がし、私たちはその声のする方を見た。


由依「わ、渡邉さん...」


そこには教室で喋った優しい声では無く、トーンを低くしている渡邉さんがいた。


澤部先生「渡邉...何だよ!」


理佐「ここ、女子トイレなんだけど」


澤部先生「そ、そんなの関係ねぇよ」


理佐「まず、小林さんから離れて」


澤部先生「やだよ、こいつはな俺のものだ」


そう言われ、胸元にキスをされた。


理佐「ちっ、」


渡邉さんが舌打ちをし、無理矢理私から離させてくれた。


理佐「きもいんだよ、襲ってなにがしたいの?欲求不満?」


澤部先生「...は?な、な訳ないだろ!1人襲ったけど俺の本命は小林だ!!」


理佐「1人?もしかして、」


澤部先生「あぁ、そうだ。お前が指導している田村だよ」


理佐「私の大切な後輩を泣かせたの澤部かよ。あの日、私にしがみついて泣いた保乃の気持ち考えてよ!」


澤部先生「田村の気持ちなんて1ミリも考えたことねえよ、」


理佐「...人の心を弄んでなにが楽しい?澤部ってほんっとにクソ人間だね。今の録音させてもらったからこれを校長先生に渡したらあんたクビだからね」

澤部先生「は、は??ふざけんなよ...」


澤部先生は動揺しながら走って逃げていった。


安心したが、私は手の震えが止まらない。



理佐「はぁ、大丈夫?小林さん」


理佐さんはしゃがみ私の顔を覗き込んだ。


私は先程のことを思い出したのか涙が出てきた。


すると渡邉さんは泣いている事に気づき優しく抱きしめてくれた。


理佐「大丈夫。大丈夫だよ」


由依「...っ、怖かった...」


理佐「小林さんの綺麗な体を汚すなって思った」


由依「ぇ?」



綺麗な体...?私は全然綺麗じゃないよ..


理佐「あ、いや、その...小林さんはほっとけない存在なの」


由依「っ、な...なんで...?」



私の体を離し、真剣な目で見てきた。


その真剣な目はいつもはしゃいでる目ではなくすごくかっこいい。


目がずっと合うため、顔が赤くなっていく。


理佐「小林さんのことが、」


目を逸らされ、深呼吸をした。


ぽん


頭の上に手を置かれ、頭を撫でられた。


理佐「ごめん、なんでもない」


そう言って微笑む渡邉さんにドキドキしてる私は何なのだろうか。


理佐「ほら、ボタン閉めるよ」


制服のボタンを閉めるために私の肌と渡邉さんの指先が触れ合う。


この心臓の音...聞こえてないといいな。



理佐「よし、終わった。じゃあ私、帰るね?」


渡邉さんは立ち上がり、足を進めた。


由依「ま、まって、」


私は行ってほしくないため、同じく私も立ち上がり渡邉さんの腕を掴んだ。


理佐「ん?」


由依「...まだ...一緒に、いたいっ...です」


あー、言ってしまった。引かれる。


理佐「可愛い、めちゃめちゃ可愛いじゃん」


そういうと渡邉さんは私をぎゅっと、正面から抱きしめた。


理佐「そんな上目遣いで言われたら断れないよ」


耳元でそんなことを言われて照れないわけがない。
 

理佐「ねえ、一緒に帰ろ?」


由依「...うん!」



バイトあるけど、今日だけはいいよね...?



理佐「私がこれからも、守ってあげる」



由依「えっ?///」



耳元で急に言われ、驚いてしまった。



理佐「んふふ笑、帰るよっ」



そう言うと私を置いて渡邉さんは足を進めた。



いつかこの気持ち伝えられたらいいな...



私は心にそう決め、渡邉さんの隣に並んだ。



end....