少し前に観た、『わたしに会うまでの1600キロ』。原題、"Wild"。
最愛の母親を亡くし、男やクスリに溺れて自分を失った女性が、ロングトレイルを通して、もう一度自分らしい生き方を見つけていく。
まず、ロングトレイルというものの存在をよく知らなかったので、その凄みに取り憑かれた。
時間をかけて、自然の中で生活しながら、自分もその一部になるような感覚。
その中で人との出会いも有り、きっと深い孤独感に襲われることも有り、少なくとも日常からは離脱した時間を過ごせるんだろうなと。
今回の舞台になっている、「PCT(パシフィック・クレスト・トレイル)」は、アメリカとメキシコ国境から、アメリカとカナダの国境までの、西海岸沿いを南北に縦断している、「歩道」だ。
主人公が歩くのは、タイトルの通りそのうち1600キロ。
まず荷物が重すぎてフラフラ。
火が使えなくて乾燥食料をそのまま食べることになったり、靴が小さすぎて足が大変な事になったり、とにかく散々な目に遭うのだが、その中で母の言葉を思い出し、同じ方向を目指す旅人に会い、そして雄大すぎるほどの自然と共に生き、少しずつ変わっていくものがあった。
そして個人的に何より、オレゴンの大自然を知れたことが嬉しかった。
私が唯一日本以外で生活したことがある場所が、まさにアメリカ・オレゴン州。
実際原作者のシェリル・ストレイドは、PCTを歩き終えた後、ポートランドで暮らしていたことを知り、一気に親近感が湧いた。
スタートはカリフォルニア。歩いても歩いても、まだカリフォルニア。
でも確実に進み、ついにある日オレゴン州に入るのだ。
その瞬間私も達成感というか、主人公とは違う気持ちだろうけど、やっとここに戻ってきたという感覚になった。
オレゴンといえばマウント・フッドのような大自然だけど、私は滞在中行く機会を逃した。
その代わりといえようか、私自身も、やっと来れた。
やっぱりそれは、美しかった。
主人公が自身の半生での感情の移り変わりに自分自身を投影してしまったのか、涙が出た。
それは一言で感動した、というようなものとは異なり、自然への畏怖、そして極限まで落ちた所から這い上がる過程で生まれる揺るぎない決意への震撼に近かった。
私も必ずこの道を歩こうと思った。









