昔ばなしと言うものは、世に多くある物語の"素"とも言える話も沢山ある。
桃太郎や金太郎の様な異常出生譚、浦島太郎の様な異郷訪問譚、或いは異類婚姻譚、鶴女房なども異類婚姻譚であり、また動物報恩譚とも言えるでしょう。
更に幾つかの類型というものもあり、"見るなのタブー"もその1つであります。
浦島太郎は乙姫との約束を破り玉手箱を開け、鶴女房の婿は部屋を覗き、伊邪那岐は伊邪那美の黄泉の国での姿を見てしまう。
ホント男ってやつぁ・・・。
"蛤女房"の旦那もそうだ。どんな話かと言うとー、
むかしむかし、ある所に一人の漁師の若者がおりました。
ある日の事です。若者が海で漁をしていると、それはそれは大きな蛤が獲れたのです。
若者は、こんなに大きく育つまでにはさぞ大変な苦労があっただろうと、蛤を海に帰してやる事にしました。
そうして数日が経った後の事です。若者の元へ娘が訪ねてきました。
たいそう娘を気に入った若者は、娘を嫁に娶る事に決めました。
祝言の後、夫婦は幸せに暮らしていました。
女房は気立てが良く、家の事もそつ無くこなし、特に作る味噌汁はよくダシが効いていて絶品でした。
しかし、不思議な事がありました。
それは女房が、絶対に料理をしているところを夫には見せない事でした。
それでも、どうしても女房の料理の秘密を知りたくなってしまった夫は、わるいことと思いながらも、台所を覗いてしまいました。
するとー、なんと女房は、味噌汁の鍋に跨り小便をしておりました。
なんてことをしているのだと、夫は烈火の如く怒りを露にしました。
すると女房はその正体を顕しました。なんと、あの時助けた蛤だったのです。
おまえさん、見るなと言ったのに・・・この姿を見られたからには、海に帰らなくてはなりません。
そう言って泣きながら、蛤は海へ帰ってゆきました。
これが『蛤女房』と言うお話。
昔話は実に色んなモノがあるなァと思うのです。
🌴yashico🌴