アガサ・クリスティー、加賀山卓朗 訳『葬儀を終えて』

 

加賀山卓朗氏の新訳版。 

安らかな死を迎えた大富豪。葬儀のあと遺言を聞く最中、彼は殺されたのだと妄言のように語る義妹が翌日に殺害され・・・。

 

※以下ネタバレ含みます。

 

 ホームドラマのような人間模様の複雑性の中に事件解決の道のりが同居するのがクリスティ作品の特徴だけど、

今作も真相は意外なところに存在する。

 

クリスティ作品のなかでは標準的な面白さに思う。

 

そんなトリックはバレずに実現するのか!?と疑いたくもなるけど、

このトリックにさほどの違和感がないくらい、

20世紀前半のイギリス上流階級では"人物の透明化"がこんなにも自然だったのだろうと感じてしまった。

 

犯人以外で、透明化された人物が作中の存在感が一番あるのもクール。