こうの史代『長い道』

 

こうの史代さんが三ページで描く、風変わりな夫婦の小宇宙。

この構成の作品は初めて読んだ。

一話完結のような二人の日常が、三ページでずっと続いていく。

 

『ぐりとぐら』が大人になったみたい。

無邪気で楽しむだけで暮らしている二人。

それでも、大人の事情がちゃんと存在しているのが良い。

 

甲斐性なしのろくでなしの壮介どののもとに、

飲み屋で知り合った父親同士のちょっとした口約束で、

本当におヨメに来た、のんびり屋の道。

壮介どののろくでなし加減も絶妙で、妻を売り飛ばそうとしたり厄介払いしようとしたりする。

それでも、道とはうまいこと、仲良く暮らしているのもいいんだよなぁ。

壮介どのの浅はかな試みは全然うまくいかないの。

 

見ず知らずの状態からいきなり夫婦になって、

お互いに恋愛感情から始まったわけでもないのに、居心地の良さがずっとあるのが良いなぁ。

 

 

あとがきのこうのさんの言葉、

『貴方の心の、現実の華やかな思い出の谷間に、偽物のおかしな恋が小さく居座りますように。』

という一文は、染み入って何度も目で追いかけた。