『奇談』(日本、2005年)

 

を観た。

大学院生の里美は、東北の隠れキリシタンの村「渡戸村」で過ごし

一緒に遊んでいた少年とともに神隠しにあった幼い頃のかすかな記憶が気がかりとなる。

おぼろげな記憶の正体を確かめるため、その村へと赴くのだが・・・。

原作は諸星大二郎「生命の木」。

 

原作は未読。

 

学者の阿部寛×人里離れた集落での超常現象ミステリーといえば、

『TRICK』の上田が脳裏にちらつく・・・。

小心者の上田と違い、今作の稗田はあまりにも堂々としていて何もひるまないところに

妙なおかしみがある。

阿部寛が真剣な顔をしていればしているほど、

目を見開いて驚愕の表情を浮かべていればいるほど、

なぜだかどこかコメディのように感じるのは『TRICK』の見過ぎかもしれない・・・。

 

今作の主人公、映画パッケージの女性は誰かな・・・と思ったら、

藤澤恵麻ちゃん!

藤澤恵麻ちゃんは雑誌「non-no」を購読していた頃のトップモデルだったし、

映画「ラブ★コン」の主演だったのをよく覚えてる。

 

ラブ★コン (通常版) [DVD]

高身長女性と低身長男性の高校生ラブコメ漫画「ラブ★コン」は学生時代にずっと読んでいたので、懐かしい。

この「ラブ★コン」の映画が2006年公開なので、

『ラブ★コン』の前年に、作品のテイストが180度異なる『奇談』というオカルトミステリー映画に主演していたとは

びっくり。

 

舞台は1970年代の物語とはいえ、

テーマや作品の色調が90年代のオカルトブームを想起させるので、

2000年代の作品であり『ラブ★コン』の前年に公開という時代感にも、少しびっくりした。

 

 

※ネタバレなしで観たほうが楽しめるので、未見の方は注意してください。

 

作品について

今作のテーマは隠れキリシタンであり、

ジャンルはホラーではなく、ミステリーというよりもオカルティックサスペンスが一番近いような気がする。
 
作品のモチーフや世界観は
日本における未開の地のロマン、昭和の神秘性、秘密の因習の残酷さなどを感じさせる、まさに「奇談」。
諸星大二郎ワールドの魅力があふれている。
 
ただ、映像にすることで違和感を感じやすいのか、いくつか疑問が浮上した。
 
最大の違和感として、里美の神隠し事件を追うことから真相に近づくけど、
神隠しと今回の儀式の関連性があまりなく、嚙み合っていないような気がしてしまう。
 
連れていかれた子ども達は今まで何をしていたんだろう?
江戸時代に神隠しにあってから帰ってきた静江はなぜあの時点で帰ってこれたんだろう?
謎は残る・・・。
 
隠れキリシタンからカトリックに改宗した渡戸村と、
隠れキリシタンを維持しつづけたことで今日では異教となった「はなれ」。
 
たまたま里美と稗田が村を訪れた時期と、はなれの人々の儀式が重なり、
決定的瞬間に二人が居合わせた・・・ということなんだろうけど、
この儀式は「はなれ」の長い歴史の中で、今まで誰もなしえなかったのか、という疑問は残る。
人口の少なそうな「はなれ」において、地下に大勢の人々がいたし、あの人数から見て
定期的にキリストが生まれていたとは考えにくい。
儀式自体は死を伴うけど実行しようと思えば、これまでの歴史の中で出来ないことはないような・・・。
 
 
 
雰囲気を味わう映画かなぁ。