『Summer of 85』(フランス、2020年)

 

を観た。

 

1985年の夏。

16歳のアレックスは、ある人物の墓で踊っていたことで逮捕された。

アレックスは、墓で眠る人物・ダヴィドと出会ってからの6週間を思い起こすのだが・・・。

フランソワ・オゾン監督作品。

 

夏に観ようと取っておいたクィア映画。

 

フランソワ・オゾン監督の作品は大好き。

もしかしたら人生で一番好きな映画監督かもしれない。

 

今作も素晴らしい。

 

ちなみに、エイダン・チェンバーズの原作は未読。

映画化をきっかけに映画のヴィジュアルで文庫化されていた。

手元にはあるから、いずれ読みたい。

 

ストーリーは、16歳の少年アレックスが奔放な少年ダヴィドと出会い、

刹那的な恋愛関係と衝撃的なその終焉を描くというもの。

 

初めての恋人。

初めての同性の恋人。

 

その情熱たるや!真剣にのめり込んでいくアレックスと、

快楽主義的で常に刺激を求める魅力的な男性ダヴィドの姿が

どちらも自分の欲望に正直で、みずみずしくも苛烈だ。

 

二人の関係性も良いんだけれど、

特筆すべきは、ダヴィドと関係を持ったイギリス人の女の子。

この女の子の存在が、作品に洗練と冷静なユーモアをもたらしているように思う。

 

女の子は、彼と愛し合っていたのは自分だけかと思いきやアレックスも恋愛関係にあったことを知って

嫉妬するどころか彼を気遣い、友情を深めていく様子がクール。

アレックスの少し狂気じみた言動に、

彼の心中を察しつつも放つ発言は白眉。

 

「あなたが愛していたのは彼じゃない」

「自分が作り出した幻想よ」

「顔と体を好きになって 心も理想どおりだと期待した」

「"理想の友達"」

「彼は存在しなかった?」

「たぶんね」

「そんなはずはない 僕は彼と一緒にいて愛し合った」

「君も彼と寝ただろ」

「私たちが思っていたのとは別人だった」

 

この台詞の応酬には痺れるな。

初恋の鮮烈な感傷を、幻想なんだと優しく伝える柔らかな女の子の表情が良い。

 

冒頭では失意のどん底だったアレックスが、

新しい男性と出会い、新たな物語の始まりを予感させて作品が閉じていく構成も

映画として完璧。

 

101分で過不足なくテンポが良いし、夏の青春映画としても最高。

 

非常にビターなんだけど、爽やかさが残る良作。