7月に読んだ本は6冊。

今月は小説を久々に読めた。

 

 

佐野洋子『今日でなくてもいい』


子ども時代の記憶から老年期の死生観まで綴ったエッセイ集。 

ご兄弟やご両親など身近な人の死の経験も語られてるけれど、

佐野洋子さん独特の素直な受け止め方に読んでいてハッとさせられる。 

エモーショナルでないのに、鋭く心に突き刺さる。 

漂白も消毒もされてない、佐野洋子さんだけの言葉はやっぱり魅力的だなぁ。 

けっして良い人って感じはしないのに、あっけらかんとした伸びやかな感性に癒される。 

「こんがらがったまま、墓の中まで」が一番好きかな。
読了日:07月15日

 

小原ブラス『めんどくさいロシア人から日本人へ』


ブラスくんの半生と、「ロシア人」という出自がナーバスに受け止められやすい昨今だからこそのスタンスについて語る一冊。 ピロシキーズのことはコロナ前からずっと応援していて彼にもずっと注目しているので、

彼がこれまで他のメディアでも語ったことがあることばかり編纂されていて目新しさはないものの、

正直で誠実な態度はいいなぁとあらためて思う。
読了日:07月13日

 

坂元裕二『怪物』


同名映画のシナリオブック。 

あまりにも素晴らしいシナリオ! 

映画で謎として残った部分が、この一冊を読んでかなりクリアになった。 

ラストシーンの二人の安否、猫について嘘をついた女の子の動機、この二点の謎は解消されたような気がする。 

確か映画では、雑音でかき消されたセリフは「お父さんみたいになれない」だった気がするけど、

シナリオでは「男かどうか分からない」なんだ…。 

これ以外にも、映画よりも「題材」についての表現がストレートなのが印象的。
読了日:07月05日

 

今村夏子『あひる』


3作品が収録されているけど、表題作が白眉。 

今村夏子さんの小説は初めて読んだ。

題材はミニマルなのに独創性と個性に溢れる作風で、なんて優れた書き手なんだろう。 

田舎の子どもの生活実感がリアルで、自分の子ども時代をありありと思い浮かべて物語世界に没入してしまう。 

行き着く先があやしい雰囲気はあるのに、悪い方向には転がらず一旦の平和的解決をしてラストを迎える構成も絶妙。 

不穏な仕掛けが随所に散りばめられていながら、嫌な読後感がないのは簡潔な文体のせいかなぁ。 

今村夏子さんの作品、もっと読みたい。
読了日:07月04日

 

津村記久子『やりなおし世界文学』


有名作中心の世界文学レビュー。 

軽やかでお茶目な語り口が読んでいて気持ち良い。 

一編がすらすら読める。 

好きな作品が取り上げられているとオッ!と嬉しくなるなぁ。 

この本を読んで、読みかけのあの作品を読まないとなぁと思い出したものがいくつかある。 装丁も素敵だ。
読了日:07月03日

 

はやみねかおる『めんどくさがりなきみのための文章教室』


小学校高学年から中学生向けに書かれた文章教本。 

主に「作文」と「小説」を書くためのポイントについてまとめられている。 

イラストを交え、大きな字でとても読みやすい。 

読みやすい文章の基本を押さえることが主眼となっていて、実践的だし小難しくないのが良い。 

小作でも書き上げる癖をつけるために、もし努力してもお手上げ状態になったら「『いろいろあって、みんな幸せに暮らしました』という魔法の言葉をつけて、終わらせよう。」(p.225)というアドバイスは目からウロコ。 

この一冊で一番感激したのは、この魔法の言葉だなぁ。
読了日:07月02日