パク・ミンギュ、斎藤真理子訳「朝の門」(『カステラ』収録)
 
を読んだ。

 

「朝の門」は短編集『カステラ』に収録されている短編。

ネットで知り合った人たちとの集団自殺において生き残った男と、寄る辺ない身で出産間近の女性。

何かが生まれるはずもない二人の人物の運命が交錯する瞬間を描く。

 

非常に短い作品。

二人の人物がともに最低の心理状況・身体状況でありながら、

一筋の光のような新しい命によって物語は幸福に閉じていくのでカタルシスがある。

 

やぶれかぶれの状況に自分で悪態をつくような描写が、二人ともに共通していて、

絶望しているのに不思議とエネルギッシュで、読んでいて苦しくなりすぎない。

改行が独特だし、いきなり太字になるトリッキーな文章構成も特徴。

 

不条理な現実において、生への肯定を指し示すようなラストがとても良いなぁ。

 

 

 

この作品は、

Podcast番組の翻訳文学試食会で取り上げられていたので、手に取った。

翻訳文学試食会さん。

文学のプロ二人があらゆる翻訳文学(日本語に翻訳された海外の文学)をレビューされている番組。

その国の文化・社会から読み解き、文学にひそむ異国の実情を明らかにしたうえで

それぞれの読み味を気取らない関西弁で掛け合いながらお話されている。

キワまで攻めるのに作品の関係者・聞き手に配慮した大人の語り口が最高。

むちゃくちゃ面白くて、水曜日の更新が楽しみ。