『子供はわかってあげない』(日本、2021年)
 
を観た。
水泳部の女子エース・サクタさんは、ある日ひょんなことから書道部のモジくんと出会う。
同じアニメが好きな二人は仲良くなるうちに、
サクタさんの失踪した父を探しに、探偵業を営むモジくんの兄のもとを訪れるのだが・・・。
田島列島先生の同名漫画の映画化作品。
 
傑作。
 
漫画を楽しんで読んだ後の鑑賞だったので、どうかな・・・と不安はあったけど、
素晴らしい青春映画。
 
キャストもかなり良くて、
サクタさん役の上白石萌歌ちゃんと、モジくん役の細田くんには好感しかない!!!
 
サクタさんの天真爛漫で天然っぽいキャラは実写だと浮いてしまう懸念はあったけど、
萌歌ちゃんが演じるからこそカラッと明るく溌剌としている様子で、
まったく違和感がないどころか、役のイメージとぴったり。
 
モジくんも純朴で真面目そうだけど頼れるし、
独特の清潔感があって実直な印象がある細田佳央太くんにぴったり。
 
人物の目線、主観カメラでの視界や、
学校の廊下で生徒たちがそれぞれの生活のままに行き交う姿はフラッシュモブっぽさも感じるし、
斬新な映像のに、ストーリーや世界観とも溶け込んでいるのが良いなぁ。
 
キャストの主演二人はもちろんのこと、
サクタさんの父役の豊川悦司が肩の力が抜けていながらも洒落てて素敵だし、
母役の斉藤由貴さんや、
モジくんの兄のバーチーも、とにかく出てくる全員が良い塩梅で観ていて心地良い。
 
極めつけは、
原作の漫画で描かれているストーリーの柱のひとつである教団側のエピソードを省略したことが、
映画として奏功しているなぁと思う。
 
約2時間という限られた尺の中で、
主人公たち二人のボーイミーツガールに、
失踪した父親のエピソードをピリリと効かせているのが、
物語に感情移入しやすいし、夏に期待する爽やかな高校生の青春モノとしてのまとまりがめちゃくちゃ良い。
 
教団エピソードまで描くなら、
たぶんドラマの話数で丁寧に描くのが向いている気がする。
 
 
派手な映画ではないけど、大好きだなぁ。
 

 

 

 

​漫画のほうも下記にてレビューを転載。
ゆるっと可愛いのにブンガクしてて、好き。


 

『子供はわかってあげない』上下巻

 

名作・・・!

田島列島先生の才能にはひれ伏すしかないんだって、分かっちゃった。

たいへん入り組んだサクタさんともじくんのボーイミーツガール。

一筋縄じゃいかないけど、

作品の根底、登場人物の心の底は、シンプルで澄み切っている。

 

全体のストーリーには影響しない細部のエピソードも素晴らしいし、

この盛りだくさんな内容を上下巻で余すことなく不足なく構成されているのもすごい。

絵柄のテイストや全体の雰囲気のゆるさ、散りばめられた良い意味でしょうもないギャグと、

ストーリーを引っ張るパンチライン炸裂のセリフとのアンバランスの妙、何もかもが天才の所業。

 

シリアスな題材を、ポップに装いつつも、

人間ドラマをぐっと引き締め、押しつけがましくないやり方で、ちゃんと答えを示してくれる。

この作品における答えは、

『世界に必要なのは----「誰かから渡されたバトンを次の誰かに渡すこと」だけ』(下巻 p.104)だとわたしは受け取った。

 

下巻 p.69にもすんごいパンチラインあるよね。

こんなんスルッと口から出てくる人、好きにならないの不可避だよなぁ。

 

田島列島先生にしか開けられない風穴から爽やかな青春の息吹を感じるなぁ。

あ~、最高。生きてるとこんな素晴らしい漫画が読める。

しあわせ。

田島列島先生には一生ついていく。