アントニオ・タブッキ、和田忠彦訳『とるにたらないちいさないきちがい』
を読んだ。
11の短編集。
現実と虚構、時間と空間の境目が曖昧で
薄もやの中を漂う世界なのかと思いきや、
描写は鮮明で抒情的な風景がありありと活写されている。
訳者の解説によると、映画に縁どられた短編集のようで
ひとつひとつの解釈に納得した。
言葉の表現が巧みで、
非難の色は込められていないのに悲しい言い当てを行ってくれる。
「REBUS」の一節、
「かの女が口にしたその声は、ある種の女性に特有の声でした。
生きているあいだ、あまりにも酒を飲み、あまりにも多くを知り、あまりにも人を愛しすぎたために、
嘘がどうこうという問題ではなくなっている女たちです。」(河出書房新社、p.52)
という人物評は、なんだかこたえる。
あと、関心の理由を「他人を観察しなければ気がすまない、むなしい好奇心」と置くところとか、
冷静な諦観に動揺させられちゃう。
アントニオーニの『情事』はたぶん観たことがあった気がするんだけど!
「REBUS」にて連想できなかったよ。
貧弱な教養だと、この作品集を理解できない気がするね。
装丁が秀逸。
ポスターにしてでかでかと貼り付けにしたいくらいだ!