『夢二』(日本、1992年)
を観た。
竹久夢二とその女たち。
金沢での逢引で、女を待つうちに湖で未亡人・脇屋巴代と出会うのだが・・・。
鈴木清順監督作品。
大正三部作の三作目。
竹久夢二を演じるのが沢田研二で、
彼のもつ影のなさやお気楽さで、軽快な作品に仕上がっている。
嘘かまことか、夢か現実か、生か死か、
そのあわいで悶え苦しむって風じゃあない。
芸術性では『ツィゴイネルワイゼン』と『陽炎座』に後塵を拝すが、
気負いなく観られるのが好い。
余貴美子さんが東京の女郎役で出演していて、今とまったく変わらない姿に惹きつけられる。
あだっぽくて堂々としていていい。
広田玲央名 (広田レオナ)は声こそ子猫のように甘やかで可愛らしいが、
立ち居振る舞いや表情は貫禄があるね。女性の天才。
逢引の場所は金沢って、『陽炎座』でもそうだったね。
この当時は北陸新幹線も開通していないし、金沢なんてとんでもなく遠かったろうに。
まっ黄色のボートがいい。浮世離れしていてね。
湿っぽい儀式めいたボートのシーンとは不似合いなポップな色合いが好い。
気に入りの女・お葉が金沢のカフェー『宵待草』で働くといって訪れてみると、
ダンスホールで楽しそうに踊る男女。その後はトランプ賭博。
そこから、死んだはずの脇屋が現れ、ぜんぶ騙すためだと『宵待草』が崩れ落ちるところなんかいい。
こんな退廃的な茶番、演じさせられるのは鈴木清順だけ。
脇屋を演じるのが原田芳雄でね、
金髪にピエロの姿であらわれんのも、その後の姿もぜんぶ心地よい。
彼の存在感でこの映画が成り立っている。
復活祭と称した暗闇の中、赤い照明を灯した戯れも一興。
水牛の頭をお皿の真ん中に色とりどりの野菜で盛りつけたお供えも?
この血なまぐさいパーティーを象徴しているようで好き。
夢二は芸術家。葛藤はあるんだろうが、
脇屋の厭世的な雰囲気には遠く及ばないのがすこし残念かな。
