『永遠に僕のもの』El Angel
 
を観た。
1970年代のアルゼンチン・ブエノスアイレス。
美しい顔の殺人鬼。実話ベースの物語。
ペドロ・アルモドバル監督作品。
 
いや、これは見事に裏切られる映画。
 
アルモドバル特有の時間軸がバラバラで同時並行する複数のストーリー展開もないし、
極彩色で鮮やかな衣装や感情豊かで扇情的な人物も登場しない。
犯罪はあまりにも何事もないかのようで自然に行われているし、エキセントリックな雰囲気もまったくない。
変質的で狂気めいているのに、ビビットな色合いに包まれるときめきもない。
 
題材とメインビジュアルからして、
倒錯しきったクライムサスペンスかと思いきや、
事実をなぞって出来事を描写するだけの退屈な作品に思えた。
 
人間関係の結びつきや情緒があまり伝わらないから、感情移入もできないし、
淡々と犯罪を重ねていくだけに感じる。
 
計画性のない大胆な犯罪でなぜずっとバレずに行動できていたのだろうとか、
学校で声をかけた生徒の家が泥棒一家だったというのも、
事実かもしれないけれど、あまりにも作為的に感じる。
 
ずっと泥棒として生きてきて少年院帰りの主人公が
「僕には他人のものなど存在しない」と独白する場面はドキドキしたけれど、そこからのドラマチックな高揚感はなかった。
タイトルも原題のままのほうがいいね。
主人公は、盗んでも人にあげちゃう性質なんだし。
所有したいわけじゃあない。
 
主人公の美青年も幼児みたいにお腹がぷっくり出ていて、
中性的で美しいけれど、それだけに思えた。
 
アルモドバル作品だと思って観ると、裏切られる。