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川端康成『古都』
を読んだ。
祇園の呉服問屋の養子として美しく成長した千恵子。
祇園祭の夜、杉木立を訪れ、自分と瓜二つの村娘・苗子と出会うのだが・・・。
中京区の呉服問屋というこれ以上ないほど京都的な商売のおうちにもらわれた千恵子の、
捨て子だという孤独と養父母への確かな愛が、細やかに描かれている。
物語に侘しさを感じさせるのは、問屋という商売ながら、才能のない絵付けに打ち込む養父の姿。
それも嵯峨の尼寺にこもっていたりする。
このあたりの陰翳も見事だね。
千恵子と苗子という美しい娘は双子で、
でも一方が捨て子として拾われたことで、完全に生き方が異なってしまっている。
もはや充実しきった労働者としての筋骨をたたえた苗子が、
ちゃんと分別のある清らかな娘に育っていることが救いだし、
なんら卑しさのないところが、美しい人にしか持ちえない気高さを感じさせる。
自然の描写も卓越していて、
孤独と生命の強さを感じさせる古木の幹に咲くすみれの花の描写も染み入る。
ことさら、杉木立みたいな華やかさには欠けるさっぱりとした剛健な緑を物語の主軸におくところも、
玄人でおそれいる。
これほどまでに四季折々の風物や行事と、伝統だけではない京都のモダンな一面をふんだんに盛り込んだ贅沢な作品ってもう、
生まれてこないんじゃないの。
章の区切りも、景色の移り変わりと季節の祭りに連なって、たしかな時間の経過を感じさせる。
並の教養やあらしまへん。
いやはや、間違いなく近代文学を代表する作品の一つでしょう。
