吉行あぐり、吉行和子『あぐり白寿の旅』

 

を読んだ。

白寿の吉行あぐりが、夫エイスケのこと、戦争のこと、3人の子どもたちのこと、四季折々の花の世界のこと、娘の理恵と和子との旅の思い出を綴ったエッセイに、

娘・和子の視点の母との旅の記憶が連なる。

 

美容師の吉行あぐりといえば、

作家の吉行淳之介と女優の吉行和子の母というだけでなくて、

NHKの朝ドラに取り上げられた有名人。

 

とはいっても、もう20年くらい前の朝ドラで、わたしはその頃小学校1年生やそこらで

観ていたのかいなかったのか、ほとんど記憶がない。

 

白寿といえば長寿祝いでも高齢の99歳で、

それでも文章を読んでいると、記憶も思考力もしっかりしているようで敬服する。

 

エッセイを読んでいると、年齢は関係なくもとからの気質なんだろうけれど、

とてもアッケラカンとした人物という印象を受ける。

 

このエッセイの中で夫のことを「エイスケ氏」とよんでいて

エイスケ氏も、息子の淳之介と同様に、女性関係が華やかな人物だったようなのだけれど、

時を経て明らかになった交際関係も、まぁそういう人でしたから、とすんなり受けとめているみたい。

 

娘の和子さんとの旅で、

旅館の方がてっきりエイスケ氏と夫婦で訪れた場所だと覚えてご案内すると、

エイスケ氏が別の女性と泊まった宿であったりね。

和子さんの章で、エイスケ氏の女性関係にまつわる別エピソードをいくつか書き連ねているけれど、ほんとうにエイスケ氏という人はそういうエピソードに事欠かない人物みたい。

 

明治から平成へ、四つの時代を生き抜いた女性。

長い間脈々と受け継がれていた日本風の生活が、たかだかここ100年のうちにすっかり変わってしまったのだと、思い知らされる。

木造の建築も、手入れと火事に気をつければ長持ちをするのだとか、

季節によって障子を張り替えたり、畳を入れ替えたりする伝統的な日本家屋の姿や、

素肌に着る浴衣を毎日桶と洗濯板であらう毎日の過ごし方、

そういうものも、ずっと受け継がれてきた生活様式なはずなのに、あっという間に変わってしまった。

 

すばらしいのか、すさまじいのか。と結んでいるけれど、

わたしはインターネット技術やパソコンと共に成長してきた世代だから、

生活の上でスピードとか効率が重要視されることを当たり前に感じすぎているのだな、と文章を読んでいて身につまされた。

 

春夏秋冬、四季折々の花々の生命にうたれる。

そういう時間も尊い。

 

引用で、

 

生くることやうやく楽し老の春

 

という富安風生の俳句が挿入されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしもあぐりさんみたいに一本筋の通った生き方をして、

楽しい老の春を過ごしたい。