江戸川乱歩 『黒蜥蜴』
を、読んだ。
この世の美しいものをすっかり集めてしまいたい女賊・黒蜥蜴に狙われた、「エジプトの星」と美貌の令嬢。
ホホホホホ、久々に乱歩を読んだわ。
妖しさ満点の乱歩作品の中で、大衆向けの通俗小説の位置づけでしょう。
説明が過剰なくらい、種明かしがあけすけなのよねえ。
娯楽性に富んでいて、妖艶ではあるんだけれども、一種のライトな感覚があるのよ。
黒蜥蜴は、しつように黒衣婦人と描写されていて、そそられる。
ホラ、黒い服って、色白の人の肌がいっそう際立つじゃあないの。
彼女は超人的な身体能力など皆無で、観察力と社交性と知性ときわめつけの美貌で、欲求を満たしていく怪盗なのだよねえ。
貴婦人のような、マダムでありながら、
上品な口調で、「僕」っていう一人称使うでしょう。
それが、別に一貫した一人称というわけではなくて、「わたくし」とか「あたし」とか云ったりもするんだなあ。
豊満な肉体を有した婦人なのだけれど、男装がサマになるような、中性的なニュアンスを持っている。
黒衣婦人は、宝飾品と同じように、否、それ以上の執着をもって、美しい人間を手に入れようとするのだよねえ。
美しいもの、それ自体で完結させておきたい、のではなく、残酷なテイストで仕上げようとするのよねえ。
この美しい女賊と対決するのが、かの明智小五郎。
明智はいつも余裕がある紳士よねえ。
トリックのキイワードは「人間椅子」。
ラストシーンの厳かさは、艶やかな黒蜥蜴の最期にふさわしいような、
感傷的すぎるような、すこし妙な読後感にさせてくれるねえ。
どこへなりと、覚悟はできています。
