【2024年 京大の古文解説⑥(理系)】大問3問一

 

 

 

《現代語訳》

 山奥深くに 足を踏み入れると たいそう風が冷たくて どこも桜の花が咲くのが遅い春だなあ

 

 諺解が言うには、人里に近い低い山(里山)さえ寒いところに、山深く入るとますます寒いので、里山の葉が遅いだけではなく、奥山も遅いのだ。「いづくも(どこも)」という(言葉)に、里の(桜の開花が)遅い(という意味合い)も、こめられているはずだ。

 

《解説で説明しなかった用語》

※分くれば…「分く」は、後に出て来る「分け入る」「尋ねる」と同じ意味。草をかきわけて、奥へと入っていくこと。

※いとど…ますます・いっそう。本文では、「いよいよ」と置き換えられている。「いと」は「大変・非常に」という意味。

※さえて…終止形は「冴ゆ」。意味は、冷え込む・冴える。

※いづくも…どこも。「いづく」「いづこ」は同じ意味。

※花…桜のこと。ソメイヨシノではなく、山桜のことを指すので、頓阿は山に分け入っている。

※かな…詠嘆(~だなあ)。歌の終わりが「遅き春かな(遅い春だなあ)」という詠嘆であることから、筆者は「花を待ちかねたる心が深い」ことを読み取っている。

※端山…人里近い低い山。里山。奥山との対比。

※寒きに…「寒し」連体形+接続助詞「に」。単純接続(~ところ)で訳す。

※寒きゆゑ…「寒し」連体形+名詞「ゆゑ」。ここでは「~ために」と訳す。あとの「見えぬゆゑ」も同様の訳。

※~といふに…「いふ」と「に(格助詞)」の間に、「言葉・表現」などが省略されている。

※里の遅き…「里の」と「遅き」の間に、「桜が・桜の開花が」などが省略されている。

※遅きも…「遅き」と「も」の間に、「という意味合い」などが省略されている。

※こもる…籠もる。主語は「意味合いが」なので、「込められている・含まれている」などの意味だとわかる。

※べし…「推量(込められているのだろう)」「当然(込めらているはずだ)」などの訳がよい。