ドストエフスキー『九通の手紙にもられた小説』を読む

 

 初の小説である『貧しき人々』を書き終えた二十四歳のドストエフスキーが、その同年、一夜で書いた初の短篇小説。二年後の一八四七年に発表された。こちらも書簡体。外見・内面の人物造形は見られず、意表をつこうという意識が前面に出たプロットの習作のような作品。読後に「ふーん」となる。

 

 二人の男(いかさまカルタ師らしい)が、カモにしようとした資産家の若者についてもめている。一方は、厄介払いしたいし、もう一方は、その若者を紹介した件について、約束した見返りを払って欲しい。一方が逃げて、もう一方が追いかけるいたちごっこを続けるが、実は二人とも、カモにしようとしていた男にしてやられていた……というどんでん返し。

 

 

ピョートルとイワンの2人が主役。ピョートルはイワーヌイチ(≒イワン)、イワンはペトーロヴィチ(≒ピョートル)。名前をテレコにする手法は『分身』でも使われている。

 

 

なにかとややこしい。ピョートルが嘘をつくから。