ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』人物事典106(116~119人目)

 

~リザヴェータ など~

 

・リザヴェータ…健康そうな農婦の赤ちゃん。【⇒第2編:場違いな会合3 信仰心のあつい農婦たち】 ゾシマ長老は、最後の法話のとき、長老は、「主よ、あの母親にも娘のリザヴェータにも恵みを垂れてください!」と言って、十字を切った。【⇒第2部 第6編:ロシアの修行僧1 ゾシマ長老とその客たち】

 

・リザヴェータ・スメルジャーシチャヤ…スメルジャコフの母。神がかりで口がきけない。身長百四十センチそこそこ。二十歳。グリゴーリーとマルファの赤ん坊を埋葬した晩、フョードルの家の庭でスメルジャコフを出産し、翌朝亡くなった。【⇒第3編:女好きな男ども1 下男小屋で】

 夏も冬も同じ麻の肌着を身につけ、裸足で歩き回り、地べたやぬかるみで眠っていた。どんな服を着せても、置きっぱなしにする。お金をもらっても、募金箱に投げ入れてしまう。母はだいぶん前に亡くなっている。乱暴な父親が亡くなったあと、かえって「信心深い町中の人々から、孤児として愛される存在となった」。しばらくして、お腹が大きくなり、父親はフョードルではないかと町のうわさになった。コンドラーチエワの屋敷に引き取られ、お産までは家を出ないように厳重に警備されていたが、警備をかいくぐって、フョードルの家の高い塀を乗り越え、風呂場で出産して、明け方に息を引き取った。子どもはスメルジャコフと名付けられ、グリゴーリーとマルファに育てられることになった。【⇒第3編:女好きな男ども2 リザヴェータ・スメルジャーシチャヤ】

 

 

・リシャール…キリスト教のパンフレットに登場する人物。二十三歳そこらの殺人鬼。断頭台に送られる直前に、罪を悔い、キリスト教に帰依した。私生児だったが、親に捨てられ、幼少期にスイスの山奥の羊飼いに、粗末な扱いを受けて育つ。食べ物すら与えられず、恐ろしいほどの空腹を抱えて、豚のエサを盗むたびに折檻された。一人前の力がつくと強盗を始めた。ジュネーヴで働き出したが、老人を殺して金を奪い、死刑を宣告された。慈善家や上流階級の人間が刑務所に押しかけ、「おまえはわれわれの兄弟だ、おまえは神の恵みを授かった!」と口々に言う。リシャールは感激して、「神の胸のなかで死ぬつもりです!」「今日は人生最良の日なんです」と、断頭台にかけられた。「一人の人間が自分たちの兄弟になった、神の恵みを授かったというだけで、その人間のクビをちょんぎるなんて、ロシアじゃばかばかしくて考えられもしないがね」と、イワンは言った。【⇒第5編:プロとコントラ4 反逆】

 

・リャガーヴィ(猟犬)⇒ゴルストキン

 

・ワーシャ…ゾシマ長老に祝福を受けたプロホロヴナの息子。イルクーツクへ働きに行った息子。母に手紙を書かない。【⇒第2編:場違いな会合3 信仰心のあつい農婦たち】 と思ったら、帰宅したプロホロヴナのところへ、自分はロシアに戻る途中で、三週間ほどあとには、「母さんを抱きしめられる」と書いてあった。人騒がせな男のちょっと眉唾な手紙は、ゾシマ長老の死を前に実現した奇跡として修道院を活気づけた。【⇒第4編:錯乱1 フェラポンド神父】