ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』人物事典101(109~112人目)

 

~ヨシフ神父 など~

 

・モローゾワ夫人…商家の未亡人。大きな石造りの二階建てに独身の姪と住んでいる。四年前から、親戚筋のサムソーノフの意に沿って、グルーシェニカに中庭の離れを貸している。モローゾワ夫人は、嫉妬深いサムソーノフがグルーシェニカに付けた監視係だったが、すぐにその必要がなくなった。【⇒第2部 第7編:アリョーシャ3 一本の葱】

 

・ユーリア…ホフラコーワ家に仕えている。見張り役。アリョーシャが来たことをリーズに知らせた。アリョーシャのケガに動転したリーズに、「いつも油を売っていて、呼んでもすぐに来たためしがない!」と言われる。アリョーシャのために、水をもって走って来た。そして、リーズがアリョーシャに秘密の話をしていると、今度は、「ほら、ユーリアなんかもう、お氷を持ってきた!」。【⇒第4編:錯乱4 ホフラコーワ家で】

 カテリーナがヒステリーを起こしたと知らせに来た。【⇒第4編:錯乱5 客間での錯乱】

 今朝、いきなりリーズに殴られた。そして、一時間ほどして、リーズはユーリアを抱きしめて、両足にキスをした。【⇒第11編:イワン2:悪い足】

 

・ヨシフ神父…図書係の司祭。「場違いな会合」で、パイーシー神父とともに四人を出迎える。フョードルの殉教者列伝の話を聞いて、「いったいどの聖人について、そういうことが書かれているとおっしゃるのですか?」とたずねた。【⇒第2編:場違いな会合2 老いぼれ道化】  

 「国家からの教会の分離を全否定する」イワンの論文を、非常に面白い論点に立っていると評価する。ミウーソフが、「法王全権主義」だと批判したのに対して、ロシアに法王はいないと答えた。イワンを完全に仲間だと思っている。【⇒第2編:場違いな会合5 アーメン、アーメン】

 フョードルが「決闘だ!」とわめき散らし、ミウーソフやドミートリーを侮辱するのを聞き、「恥ずかしい!」と口走った。ドミートリーの「どうして、こんな男が生きているんだ!」という発言を受けて、フョードルが「聞きましたか、修道僧のみなさん、父親殺しの言い分、聞きましたか」とヨシフ神父に食ってかかる。そして、「品行あやしい女性」だと言うその女性は、「たくさん愛した」のだ、キリストが赦したのは、たくさん愛した女だなどと言うので、「キリストがお赦しになったのはそういう愛ではありません」と、温厚なヨシフ神父も、がまんできずに口走った。【⇒第2編:場違いな会合6 どうしてこんな男が生きているんだ!】

 フョードルに、「神父さん、あなたがたはね、民衆の生き血を吸っているんだよ!」と言われ、「これはたいそう不名誉な話です!」と腹を立てている。【⇒第2編:場違いな会合8 大醜態】

 長老の最後の法話を聴くために集まった四人のうちのひとり。【⇒第2部 第6編:ロシアの修行僧1 ゾシマ長老とその客たち】

 追善の祈りが済むと、朗読を行った。長老の遺体の腐臭に対して、アトスでは、遺体が腐敗しないことではなく、骨がロウのように黄色くなっていることが、心義しき故人を祝福した証拠だと述べたが、あざけりや反発を招いただけだった。修道僧たちは、「えらそうに新説をひけらかして、何が聞くに値するものか」と決めつけた。ヨシフ神父は、悲しそうにその場を立ち去る。「たいした自信もなしに意見を吐いたのと、自分も半信半疑だっただけになおさらだった」。【⇒第2部 第7編:アリョーシャ1 腐臭】

 

 

・ヨナ神父…前世紀、百五歳まで生きた伝説の修道僧。フェラポンド神父は、念願かなって、ヨナ神父の庵室に七年前から住んでいる。【⇒第4編:錯乱1 フェラポンド神父】 巡礼者たちが、特別の敬意を払って彼の墓を示し、そこに託された大きな希望について、秘密めかして言及するならわしとなっていた。アリョーシャが彼の墓石に座って泣いていた。【⇒第2部 第7編:アリョーシャ1 腐臭】