ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』人物事典78(59~67人目)

 

~ニーナ/ニコライ神父 など~

 

・ナースチャ…コーリャの隣家の子。コースチャの八歳の姉。姉弟でお留守番している。言い争いでは、いつも弟のコースチャに勝つが、コーリャが決定をくだせば絶対的な宣告となる。カテリーナの赤ちゃんは、キャベツ畑から産婆さんが拾ってきたものだという説に疑問をいだく。最終的に、お嫁に行きたいと考えすぎたので、旦那さんのかわりに赤ちゃんができちゃったという説を唱えた。コーリャが、「じゃあ、ちびども、出かけてもいいかな、どうだい? 心細くて泣いたりしないよね」と問うと、「泣いちゃう! ぜったいに泣いちゃう!」と、おずおずと早口で言った。【⇒第10編:少年たち2:子どもたち】

 

・ナザール…グルーシェニカの家の門番頭。ドミートリーを入れないでほしいと、フェーニャに頼まれていたが、用事で二階へ行くことになり、甥っ子にかわりに門番を頼んだ。そのとき、ドミートリーのことを伝えるのを忘れていた。【⇒第8編:ミーチャ4 闇の中で】

 深夜の来客(ペルホーチン)が、ドミートリーでないと確かめ、フェーニャに取りついだ。【⇒第9編:予審1 官吏ペルホーチンの出世のはじまり】

 

・ナザリエフ⇒プロホル・イワーノヴィチ

 

・ナスターシャ…息子のアレクセイを亡くした悲嘆にくれて、三百キロ離れた村から巡礼の旅に出る。「場違いな会合」を中座したゾシマ長老の祝福を受けた一人目の女性。長老に、息子が神のもとに行ったことを喜ぶべきだと言われたものの、「わたしにはもう二度とあの子に会うことも、あの子の声を聞くこともできないのです!」と号泣してしまう。長老は、「ラケルが息子たちゆえに泣いている。彼女は慰めを拒む。息子たちはもういないのだから」の話をして、「慰めを得たいなどと思ってはいけません。慰めを得ようとせずに、泣きなさい。ただし、泣くときには、あなたのお子さんは、神の天使の一人だということを思い出すのです」と伝えた。そして、夫のもとに帰るようにさとすと、「ニキータ、わたしのニキータ、あんたはわたしを待っているんだね!」と、泣きくどきを再開しようとした。しかし、長老は次の老婆と話を始めていた。【⇒第2編:場違いな会合3 信仰心のあつい農婦たち】

 

・ニーナ…スネリギョフの上の娘。背が曲がり、両足の麻痺をわずらっている。全身リューマチ。二十歳ぐらい。スネリギョフいわく、「肉をまとった天使」。「まばゆいばかりに美しい善良そうな目が、言い知れぬ穏やかなやさしさを称えていた」。「平民の出なんで」とくり返す父に、「パパ、パパったらもう」と、いきなり目を押さえた。【⇒第4編:錯乱6 小屋での錯乱】

 父に心配をかけまいとして、苦しくてもうめき声ひとつ立てずに我慢する。「あたしなんかこの一切れにも値しない、値しない、だって、役立たずで、なんの値打ちもない病院なんですもの」と言いたげな様子で、食事もほとんど口にしない。ゲルツェンシトゥーベ先生が言うには、なんとかという水溶液の入った風呂に朝晩はいる必要がある。【⇒第4編:錯乱7 きれいな空気のなかでも】

 父の滑稽なしぐさを嫌っている。コーリャ訪問時には、貴婦人に対するようなあいさつを受けた。ずっと黙っていたが、「お医者様が来た!」と声を張り上げた。コーリャの去り際に、「どうしてもっと早く来て下さらなかったの!」と、非難のこもった声でささやいた。【⇒第10編:少年たち5:イリューシャのベッドで】

 コーリャは「すごく気立てが良くて、かわいそうな娘さんなんですね」。アリョーシャは「ああいう人たちを知ることは、きみにとってもためになることなんです」と言った。【⇒第10編:少年たち6:早熟】

 死を覚悟したイリューシャの言葉を聞いて、しくしく泣き出した。【⇒第10編:少年たち7:イリューシャ】

 少年たちが、椅子ごとかつぎあげて、棺のそばに移動させた。棺が運び出されるとき、死んだ弟の唇に、自分の唇を重ねた。【エピローグ:3イリューシャの葬儀。石のそばの挨拶】

 

 

・ニキータ…「ゾシマ長老に話を聞いてもらったナスターシャ」の夫。辻馬車の馭者。妻のナスターシャが巡礼に出て三か月、おそらく酒を飲んでいるだろうと噂されている。渡島長老に説得されて、妻は帰って来ることになった。【⇒第2編:場違いな会合3 信仰心のあつい農婦たち】

 

・ニコライ神父…修道院長。「場違いな会合」の一行とマクシーモフを、昼食会に招いた。上背があり、やせぎすながらまだまだ頑健そうな老人。いかめしく陰気な顔立ち。修道院での会食にやって来たミウーソフが、思い切って院長の手にキスをしようとしたが、折あしくその手を引っ込めてしまった。食事会にフョードルが乱入したとき、フョードルも食卓の仲間に入れて、「どうか愛と親族の睦み」を結ぶようにとお願いしたが、ミウーソフは「そんなことはとても無理です!」と叫んだ。修道院を侮辱するヒョードルに、「これは、キリストの薬であり、わたしのおごった魂を癒すために送られてきたものである」と礼を言うが、「陳腐なせりふに陳腐なジェスチャー! 陳腐な嘘に、おきまりの陳腐なお辞儀!」と言われてしまう。さらに、フョードルが悪意に満ちた嘘八百を並べ立てると、「あなたを辱める者をけっして憎んではならない」、自分たちはそうふるまうのだと言って諭しているが、「せいぜい偽善者やってるんですな!」と言われた。【⇒第2編:場違いな会合8 大醜態】

  フェラポンド神父は、修道院長のところで悪魔を見たそうだ。【⇒第4編:錯乱1 フェラポンド神父】

 

・ニコライ・クラソートキン⇒コーリャ【⇒第10編:少年たち4:ジューチカ】

 

・ニコライ・スネリギョフ⇒スネリギョフ

 

・ニコライ・ネリュードフ⇒ネリュードフ

 

・二等大尉⇒スネリギョフ

 

・ニノーチカ⇒ニーナ

 

・ねじ釘カルプ…県の刑務所を抜け出して、この町に潜伏していた恐ろしい囚人。グリゴーリーは、リザヴェータが身ごもったのは、彼のせいだと町中の人を説得しようとした。【⇒第3編:女好きな男ども2 リザヴェータ・スメルジャーシチャヤ】

 

・ネクラーソフ…イワンが引用した詩の作者。百姓が、ぬかるみにはまって抜け出せないでいる馬に鞭を入れる。鞭うつことに酔いしれ、激しく打つ。泣いている「おとなしい目」をねらって。馬はわれを忘れたように、前へ飛び出して、ぬかるみから抜け出す。「この詩はほんとうに恐ろしいと言うしかない」と、イワンは言った。【⇒第5編:プロとコントラ4 反逆】

 

・ネフュードフ…判事。コーリャの「ガチョウ事件」を裁いた人。「あれはおれじゃない、あいつがおれをそそのかしたんだ」と、ヴィシニャコフが主張するので、にやりと笑って、コーリャに「学校当局にすぐに通知する。きみが今後こういう計画に夢中にならず、腰をすえて本を読み、しっかり勉強するように」と言ったが、判事は実際には通知しなかった。粋な男。【⇒第10編:少年たち5:イリューシャのベッドで】