TODAY'S
 
2021年度 甲南中(Ⅰ期午前a)

 

大問一:高橋幸宏『心に訊く音楽、心に効く音楽 私的名曲ガイドブック』

 

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 受験国語というのは、それぞれの学校の「クセの見せどころ」という感じで、なかなか面白いものですが、この学校もクセが相当強いです。例年、甲南の出身者の文章を出題して、甲南閥の幅広さアピールしてくるのですが、今回は、そうではないようでした。

 この著者の文章は、受験では見かけません。文章内容も独特で、昔、彼が出した曲をめぐる創作秘話で、ポエム的なファンブックです。段落なんて概念は存在せず、一行ごとに改行するタイプ、1000字弱の短い文章に、全部で25もの段落があります。なぜ、出題者はこの文章を出題したのか。理由があるとすれば、ただただこのミュージシャンが好きだったからです。読解の力をはかれるような文章を選んだわけではないのです。

 わたしが、国語の先生になって最初に受け持ったのは、そんな甲南中を第一志望とするクラスでした。つまりは、男子の最下位クラスです。まだ小学生でありながら、昔の仲間がひさしぶりに集まった同窓会のようなノリで、みんな気のいい奴らでした。ちょっと光るところのある者は、基本的に絶対勉強しない主義者で、そいつはそいつで一目置かれ、自他ともに認めるおバカさんは、みんなからもう全力で愛され、なぜおまえが塾にいる!?と言いたくなるジャイアンのような男がすぐに暴れ散らか、しかし、そいつもまた笑顔に可愛げがあり(その父親はゴリラのような屈強な強面だったが)、いつもなぜか不運なとばっちりを食う少年の背後には、おそろしく過保護な母親がおり、何かあってもなくても、すぐさま怒鳴り込んできて……、もう喜劇そのものでした。勉強に、内容なんてない! やるか、やらないか、やられるかだ!

 そんな奴らを、大きな口を開けて全部引き受けてくれた甲南様には、感謝しかございません。

 

  

 

問一 漢字の書き取り

問二 副詞や接続詞の穴埋め

問三 線部の直前の一文を書くサービス抜き出し

問四 線部の直後の一文を書くサービス記述

問五 語句の意味の説明

問六 対義語

問七 語句の意味

問八 外来語

問九 いきなり歌詞の解釈をさせる記述問題が登場! 模範解答は120字くらいある。ここまで語句とサービス問題を並べたのに、急に思いつきのように、難度が上がった。そして、どう採点するつもりか知らないが、まあ、なんでもいいや! 書くか書かないかだッ!

問十 立原道造の詩が「どーん」とあって、「この詩の作者が考える幸福や愛とは何だとあなたは考えますか」だとさ。いいぞ、甲南! こういう先生じゃなきゃ、あの子たちを引っ張っていけないッ! 

 この作文が書けるようになるために……などと、逆算して考えても無意味だ。まずは、「とにかく甲南をほめておけ、いいな! 幸福や愛とは、甲南中学そのものだと思いますッ! どんな作文でも、この書き方でOKだ! 何、気に食わない??? それならなんて書くんだ、君は?」というあたりから、出発したらいいのかな?

  

 

大問二

 

文学史 司馬遼太郎の作品として、『燃えよ剣』と『梟の城』を選ばせるなんて、趣味以外の何物でもありません。読んだことありますか? 『梟の城』 ニンジャの話です。ちょっとエッチなところがあって、中学生のぼくは興奮しましたが、甲南受験生、どうだい、読んでみないかい? そういえば、このクラスの子たちは、そういう面では無邪気でした。灘クラスなんて、おっさん以上にどぎつい下ネタをカマす子がいましたけどね。

 

  

 

大問三

 

四字熟語。

 

  

 

要するに、でかい記述二問の採点は、教師のさじ加減一つであり、あとは語句ばっかりのハリボテ入試。でも、それがよい。