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2022年度 京都大学(理系国語)の解説!大問二

 

  大問二は、軽めに……

 

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 これ、小説だったんですね………。日記かエッセイだと思っていました。筆者は、この小説を書いているとき、『言葉と歩く日記』という日記を書いていています。両者は、非常に内容が似ており、一見、どっちがどっちか、わからなくなりそうでした。『言葉と歩く日記』から、いくつか言葉を引用してみます。

 

――「そんな雲をつかむような話」をしても仕方ない、あやふやで、意図も目的も不明で、どこへ繋がるのか、何が起こったのか、全く何も分からない、誰にも理解できない、という慣用句に含まれた常識を逆手にとって、「いや、雲をつかむのが文学なのだ」と言ってみたくなってつけたタイトルだ。

 

――文章を物質として見る。単語一つ一つを物として観察する。単語は自分の心が外にあふれ出したものだと考えるのは思い込みで、単語はわたしの生まれる前から存在し、独自の歴史を持ち、わたしが死んでも全く悲しまずに、存在し続けるだろう。

 

  

 

問一

比喩的な「表現」を、わかりやすく言い換える問題です。紙の先端が相手の眼に刺さることは、言葉の切っ先が相手の心を傷つけることを表しています。また、ここでの「責任」は、書き手が、相手の心へとこちらの思いをしっかりと届けなければいけないという責任のことです。「真っ直ぐに飛ばさなければならない」というのも、同様の内容である。

・これに+αする内容については、書き手のさじ加減一つです。特に対比が強調されている文脈でもなく、根拠を推測したところで常識的な答えにたどりつくだけなので、《理由》や【否定】は、入れても入れなくても良いです。特に決まった書き方はありません。基準となる内容が書けていたら、「だいたい7割はある、OK」と思っておいてください。

・大問2は、日常会話の延長です。学校で友人の話を聞いて、相槌を打ちつつ、相手の言葉を補うような、親切心を発揮する問題です。「この比喩ッッツ!」などと、あまり視野が狭くなりすぎない方がいいです。頭で考えようとしすぎなければ、案外、さらっときれいに書けるみたいです。

 

【採点基準】

 (内容1)傷つけないようにする

 (内容2)一人の相手

 (内容3)しっかり届ける

 

問二

・「口が重く、実直で無骨な印象」の「鱒男」が、突然、「出たい」と言いました。切実な気持ちだけは伝わりましたが、「もう少し言ってくれないと意味が分からない」のです。筆者は、ふだんはほとんどしゃべらない人が、唐突に発言したことに驚き、同時にまた、言葉の意味することがわからないままに、その切実な思いだけがダイレクトに伝わったことに、どきっとしているのです。

・「鱒男」は、そのまま書くとわかりにくいので、自分の言葉で置き換えます。

 

【採点基準】

 (内容1)寡黙な

 (内容2)突然

 (内容3)意味がわからない

 (内容4)気持ちは伝わる

 

問三

・文法では、「と」を使って、ある状況を仮定してから希望を伝えるのは間違いだとされています。しかし、「鱒男」の言葉からは、切実な思いがしっかりと伝わってきました。文法的な正しさとは、相手に「意味」を正しく伝える「ため」に、必要とされるものものです。一方、本当に伝えたい「思い」がある場合、文を整えることは、かえってその「思い」をストレートに伝えることを、妨げるようです。小さな子どもの会話からもわかるように、文としての体裁は後回しになるものです。

・「他人の庭の木から折ってきて」とは、「出たい」という「自分の」希望を表す文には不釣り合いな、「春が来ると」という、「主語が誰だかわからない」仮定文を付け加えたということを表しています。

・ここでの「手触り」とは、文章の手触りのことです。「鱒男」の言葉は、「接ぎ木」したような、なめらかではない、ゴツゴツした手触りです。立て板に水を流すような能弁ではなく、素朴で不器用な訥弁なのです。

 

【採点基準】

(内容1)接ぎ木についての、わかりやすい説明。

(内容2)文法的な正しさと本当に伝えたいことの関係を、わかりやすい説明。

(内容3)手触りについての、自分なりの解釈。