世界史は共通テストになってどう変わったの?(6)

 

大問3B:400字弱の資料を読み、空所をうめる問題。空所イ・ウが8個もあって読解の邪魔になるのですが、必要なことは相変わらずで、年代を見つけることと、線部の直後の内容を踏まえることだけです。文語的な表記もあるのですが、ルビがついているので特に問題ありません。

 

 

問4 線部は上記のオレンジ部分、誤っているものを選ぶ4択問題。線部は、「その手先に僧侶を使い、学校はなるべく立てずに、能ウ限り寺を建てた。村里の児童を訓えるのには小学校教師によらず、僧官によって百姓の子供に祈祷を教えた」と、長々と引かれていますが、問われるのは線部とは無関係な(関連はしている)、「世界史における宗教と教育・政治との関係」です。線部を引いてそれっぽく見せて、まるで読解をさせるかのような形式をとっていますが、ただの「こけおどし」だと言えます。そうでないと言うなら、傍線を引いて、受験生に読ませておきながら、その内容をあえて問わない意図は何かと、逆に問いたいくらいです。

 19Cのロシアについての文章に対して、20Cのフランス(宗教と政治)、中世ヨーロッパ(宗教と教育)、イスラム(宗教と教育)、隋・唐(政治と教育)を、ざっくりと問います。

 ①の「政教分離法」はピンとこない受験生が多いはずで、センター試験でも過去に出題されていません(どの教科書にも載っている重要事項ですが)。こういう選択肢がある場合、「誤っているもの」を消去法を使わずに選はずです。④の科挙について、「仏教」の理解を問うものだというのが誤り(→儒教)で、こちらもセンター試験ではこれまでクローズアップされてこなかった内容ですが、それはあまりに基本的だからです。さっと読み飛ばして、見落とさない限り大丈夫でしょう。②③は明らかに正解なので、たいてい「①を保留したうえで④を×にする」という2択になると思います。

 

問5 空所イ・ウに官僚か革命家のいずれかを選ぶ2択と、青線部のスローガンを選ぶ2択の組み合わせ4択。資料から読み取るのは、「前世紀の半ば=19C半ば」ということと、空所周辺に書かれているように、官僚と革命家のどちらかが、「農民の覚醒」を推進ということ。

 19Cだということさえわかれば、スローガンが「民族自決」でないことは明らか。ナロードニキ運動についてあいまいになっている受験生であっても、「ヴ=ナロード」を選べます。また、イとウについては、普通に考えれば、農民の覚醒を推進するのは、「官僚」ではなく、「革命家」にちがいないという、常識的な推測で十分です

 本文には、どちらが推進したかは書かれていません。つまり、読解問題ではありません。どちらかが、推進したことが読み取れるだけです。従来なら、こういう推測は、世界史を一夜漬けして来た人の特権だったはずだが、それが公然と許されることになったらしいのです。このようになったのは、知識を基にした推測ではなく、知識とは別に推測の問題を作ったせいです。

 要するに、空所をたくさん作って複雑に見せているが、世界史のあんまり仕上がっていない受験生でも得点できる問題となっていました。

 

問6 2択の知識問題の複合4択。「主語」と「述語(事績)」の組み合わせ4択は、大問1Aの問1と同形式のものです。それなら、なぜ大問2の問6は、「主語」を問わず「述語(事績)」だけ問うたのか、謎です。それで難しくなると思ってそうしたのなら、浅はかすぎます。クイズとしてはちょっと複雑ですが、それによって、知識も論理力も試せていません。センター試験時代の2択は、詳細な知識についての正文と誤文の組み合わせを問うものだったのですが、共通テストになってからは、「主語だけ」「述語だけ」で、無理矢理4択にしているので、難度はかなり下がっています。

 この問題では、まず、空所直後の「農奴解放」の語を「アレクサンドル2世」と結びつけます。エカチェリーナ2世との2択なので、まず間違う受験生はいないでしょう。センター試験でも、「アレクサンドル2世の治世下で,農奴解放令が出された」という同内容の選択肢が出題されています。

 また、事績についても、「クリミア半島併合」と「エカチェリーナ2世」が受験生の中で強く結びついており、センター試験でも、「エカチェリーナ2世は、クリミア半島を獲得した」という選択肢が出題されているため、樺太・千島交換条約の時期があいまいでも、正解できます。これは従来の正誤問題が、一方の文について自信があっても、もう一方の文についてあいまいなら失点につながったのと比べて、格段の易化だと言えます。

 要するに、問題の「見た目」はこけおどしで、「内容」はセンター試験の焼き直しだと言えます。