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2021年度 神戸海星女子(B日程)
大問1:森博嗣『悲観する力』
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森博嗣の文章は、大阪星光でも出題されました。今回は、ポルシェ911に乗って登場し、アクセルとブレーキを両方とも大事だと述べています。この本を実際に書店で手に取るのは、自分が悲観的なことに悩んでいる人、あるいは、森博嗣のファン、あるいは、国語の先生でしょう。
悲観的であることはマイナスだと言われがちだが、こういう肯定的なことを言ってもらえると、自信になります。孤立した人にとって、心から求めていたものが得られるという体験は、どんなささやかなものであっても、救いとなり得ます。そんなビタミン剤としての読書に、新書はちょうどいいのです。新書は知識を得るものではなく、役に立つものです。
一方、受験生は、このいずれの条件にもあてはまらない可能性があります。あてはまらない人にとっては、一生、縁のないタイプの本です。読者として想定されていない本を読むには、想像力が必要です。ここに国語の「~もある」の作用があり、楽観的な人にとって、悲観的な人のことを考えるきっかけとなるのです。物語における「~もある」は、「隣人愛」的なものです。
また、これはB日程の入試でもあります。第一志望の入試に手ごたえがなくて、落ち込んでいる子を、はげます文章です。 国語のテストには、実力を試すだけでなく、国語の先生が授業をする代わりに、文章が授業をするという側面があります。国語の先生は、自分の思いを代弁する文章を選ぶので、おのずとそういうことになります。
問一 書き取り。書ける。
問二 語句。選べる。
問三 接続詞。
問四 語句。書ける。
問五 (1)落ち着けば探せる。
(2)探せる。
問六 記述は、うまく字数におさめないといけない。
問七 選べる。
問八 探せる。
問九 探せる。
問十 書ける。
大問2:井伏鱒二『屋根の上のサワン』
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井伏鱒二の文章は、洛星でも出題されました。昔の国語の先生は、なんとかその良さに気づいてほしい、気づかせられないかと、手ぐすねをひきながら、その手法を競ったものです。ただ、そこまで先生が前のめりにならずとも、子どもっぽくて切ない主人公の愛情と、その愛情がついに相手の心を傾かせるに至らないという残酷な真実を映しており、心を打つものがあります。どんな純粋な愛情も、一方通行ならば偏愛です。愛情は、自分の内面だけで完結するものではなく、関係性の中で定義されるという点で、不安定であり理不尽なものです。
親の心子知らずと言いますが、子を愛するからこそ子離れできない母も、サワンを愛するからこそ羽を切った男も、いずれも俯瞰で見れば悲しきモンスターなのです。それなしにはいられない孤独な内面が、自分のための他人を求めさせ、それゆえに相手を遠ざけてしまいます。
YouTubeのコメント欄なら、主人公にヘイトが向かうことでしょう。あれは正しさの場です。しかし、内面に大なり小なり異様なものを抱えずにはいられないのが人間なので、この男を遠ざけようと思っても、自分ならばこんなことはしないと思っても、なぜか自分の内側から響くものがあります。それゆえに、名作として今も読まれているのです。
問一 書き取り。
問二 探せる。
問三 選べる。
問四 使う言葉を設定してくれているので、親切。
問五 授業みたいなもの。わざとらしい対話形式にせず、ちゃんとした誘導になっている。