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2021年度 洛星(後期)
大問1:須賀敦子『塩一トンの読書』
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読み継がれていってほしい古典の一つです。甲陽2日目の大問1と似たような主張。
特にいうこともないので、ちょっと脱線します。漢文を読むときに、レ点おくりがな付きのものを、13524と、どのボタンを順に押すかという早押し競技みたいに読むだけだと、何をしてるんだろう、こんなことに意味があるんだろうかと、空しい気持ちになってしまいます。もちろんそれありきではありますが、たまには、いったんそこを離れてみることも大事です。
たとえば、レ点も何もない五言絶句を自分なりにがんばって読み下して、そのあとに正解の読み方を見てみると、ほんの少しだけ楽しいです。一行ずつ、それっぽく読んでは確認することを、くり返すだけですが、間違ってばかりの中で、なぜかたまに正解の読み下しとピタリと合って、びっくりすることがあります。とてもうれしい。漢文つかめたんじゃないかと、いきなり気が大きくなります。へえ、この動詞をこんな読み方するとか、その助詞づかいの発想はないわとか、自分がそこそこできる気がしているものだから、ちょっとメモでもしておいてやるかと、前向きになったりします。
問一 語句。選べる。
問二エの選択肢みたいな微妙なのは入れないでほしい。
問三 選べる。
問四 選べる。
問五 文学史。親切な問題。
問六どれも似たような選択肢に見える。他の学校の不正解選択肢は、もっと大きく外してくれるのに……。「さらに」を根拠にしろということだろう。
問七もう少しマイルドな選択肢にしてくれないと、選びにくい。
大問2:戸森しるこ『サヴァランの思い出』 飛ぶ教室vol.49
「サヴァランの思い出」製作秘話① サヴァランを探して - 「サヴァランの思い出」製作秘話 (fc2.com)
梨屋アリエという作家は、電脳空間とメルヘンの世界を行き来しそうですが、戸森しるこという作家は、こたつとみかんの間を行き来しそうです。「しるこ」というペンネームは、小学生のころのあだならしい。
主人公:お化粧とか、してないんだね。
主人公:女の人の言葉でしゃべらないし
楽さん:テレビに出ている人は、そういう人が多いかもしれないね
楽さんは、主人公の父親。母親と離婚したあと、男の人と結婚します。ここは、それが明かされる場面なのですが、男の人を好きな男の人が、「女装する」という発想がなかったので、楽さんは女の人で、母が女の人と結婚したのかと思ってしまいました。あとまで読めば、「その国では、男の人が男の人と結婚することができるのだそうだ」と書かれているので、これはどうやら楽さんのことにちがいないと推測できますが、ちょっとした謎かけのようになってしまいました。ふだん、自分がどれだけ「型」にたよって、物語を読み飛んでいるのかということを、知ることができて、よい収穫でした。
この作家の作品は、小学生の女子にとても人気があるそうです。子どもたちが求めているのは、登場人物たちの魅力と、ドラえもんのポケットから飛び出すような「何か」です。一方、大人には、リアリティーとドラマが必要です。想像力の乏しくなった大人は、リアリティーがないと、物語の世界に入れないのです。この作品にリアリティーがないのは、子どもが絶賛読み飛ばすはずの「説明部分」のせいです。説明部分は、主人公の心の声が担当していますが、説明の内容が年齢相応ではないので、ふつうの「戸森しるこ」がしゃべっている感じです。
児童文学作家は、大人に厳しいのです。リアリティーなんて少しもくれません。そのかわりに、パンパンにしたポッケに、詰め込みすぎるほどの「何か」を入れて、それを取り出しては、子どもたちにプレゼントします。人気が出ないわけがない。「プリムローズ」「ブローチ」「お化粧したママ」「実は十年ぶりの帰国」「花言葉」……。大人はひとつひとつの掘り下げを要求するだろうけど、子どもの世界は、もっとにぎやかなものです。
児童文学から出発して、一般向けの作品へと進むなら、別の引き出しを開ける必要がありそうですが、今のところは、特に困ることはなさそうです。『源氏物語』だって、女性の目から見たかっこいい男性を描いて普遍的な文学となったのだから。村山由佳や長野まゆみのような、世界観のある作家になってほしいと思います。
問一 わかる。
問二 「あるある」なので、「そうそう」と思うが、この主人公がはたしてそういうタイプの人物として、一貫して描かれているわけでもない。
※さらっと読んだときの方が、むしろ「わかる」。
問三 いろいろな書きようがある。
問四あいまい。
※出題者の主観が強い。細かい理由で不正解選択肢を×にすればするほど、非の打ち所のないほど正解選択肢が正しくならないといけない。洛星は、つくった問題を、国語課の先生がもっと広く解いてみた方がいいと思う。
問五こういう小さなパーツが、どんどん取り出されていくのが、この作品の魅力。選択肢はどれも微妙。もう少し先で楽さんは別の考え方を述べているが、選択肢はそれとは異なる一般論だ。楽さんの考えは、線部の時点で念頭にあったとも、なかったとも言える。
問六 探せる。
問七 選べる。
問八 書ける。
問九最初に正解選択肢をつくったうえで、それとは別のものをつくれば、自動的に何を書いても不正解になるわけではない。
問十 だいたい書ける。
問十一 模範解答というものが用意されている記述問題ではなくて、どこまで表現できるかという表現の問題。
問十二 選べる。