2021年度 同志社香里(前期)
大問1:小嶋陽太郎『放課後ひとり同盟』
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――あおいには、家族に心配をかけないようにするためなのか、ちょっとしたけがや不調を隠そうとするところがあった。まだ小一のくせに。
出だしは、きわめて平凡な日常の一幕。「まだ小一のくせに」というマイナスの言葉が、包みこむ愛情の中から発せられたものだと、すぐに伝わって来る物語です。小嶋陽太郎は、ここ数年、入試で見かけるようになった新しい人です。
――この日の夕飯、母は葵に対しての怒りを表明するためか、この家に移り住んで初めての手抜き料理をした。
母が母となり、あおいが家族の一員になる。そして、犬も。温かいお話でした。
――犬はだんだん私以外の相手にも本性を現し始め、あおいとしょっちゅうけんかをした。おねえちゃん、キティが~、とあおいが泣きついてくるのが日常茶飯事になった。
問一 登場人物整理。だいじょうぶ。
※設問は、例年通り平易なものが並ぶ。平易になっちゃったのではなく、ちゃんと配慮して、平易に作っているので、好感度が高い。
問二 語句。それなり。
問三 選べる。
問四 書ける。
問五 選べる。
問六 選べる。
問七 探せる。
問八 できる。
問九 選べる。
大問二:稲垣栄洋『はずれ者が進化をつくる』
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生物系の文章で、この人の右に出る人はいません。二番手さえ見当たりません。
この人の文章のすぐれている点は、欲がないこと、外連味がないことです。読者は、植物のことがほんのちょっとだけ知りたくて、この本を手に取るのですが、そのような素人でも大丈夫なように、飛躍をなるべく避けて、誠実に論を進めてくれます。
読者が素人だからって、丸め込もうとしません。具体例や学説を挙げたあと、それをふまえて着地するところが、すごく手前なのがいいのです。だし巻き卵を作るように、寄せて固めてまた足して、ちょっとずつ理解を大きくしてくれます。
いたずらに読者の興味を惹くような話もしません。淡々と論理的に静かに興味深い話をします。安易な越境もしません。植物がああだから人間もそうすべきなんだとか、ゴリラを見習おうとか、そんな無茶なことは言わず、せいぜい、人間にも似たとこがありますねという程度にとどめています。そして、そういう話をするときの顔は、学者の顔ではなく、日常の顔をしています。要するに、「枕」か「結び」でしか、そういう話はしないのです。ただ、今回取り上げられた部分は、ネアンデルタール人の話が蛇足です。こんなに結論を急ぐ人じゃないはずなのに……。この人の書くいい文章はいくらでもあるので、出題者は、もう少し吟味してほしかったです。
問一 対比。いい感じ。
問二 副詞の穴埋めは、物語で出すべき。
※ここで副詞の問題を出したせいで、穴埋め問題のかぶりを避ける必要が出てきた。
※その結果、文の並べ替えパズルのような、「読解を妨げる設問」で、接続詞を問わなければならなくなってしまった。
問三 語句。
問四 指示語。
問五 探せる。
問六 並べ替え。接続詞部分だけの穴埋めで十分。
問七 要点の記述。書きやすい。
問八 全体正誤。選べる。
大問三
四字熟語
大問四
「直伝」「多生」がちょっと難しい。
大問五
「登用」「要」「主眼」あたりが難しめ。