ビクトル・ユーゴー『レ・ミゼラブル』読書メモ㊱

 

ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 レ・ミゼラブル LES MISERABLES 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌 (aozora.gr.jp)

 

第十一編 原子と暴風

 

一 ガヴローシュの詩の起源

 ひとりの少年が、古物商の店先の古いピストルに目を止め、「道具を借りるよ」と持って行ってしまった。少年は、撃鉄のないピストルを振り回して歌いながら行進する。ふたりの子どもは、ガヴローシュが出かけているうちにいなくなり、それから十余週が過ぎていた。「あのふたりの小僧はどこにいるのかな」。ポン・トー・シュー街までやって来た時、菓子屋のリンゴ菓子に目を止める。しかし、残念ながら、持ち合わせがなかった。

 

――まったく未知の世界にはいり込む前になお林檎菓子が一つ食える、天の与えた機会であった。ガヴローシュは立ち止まり、上衣をなで回し、ズボンの内隠しを探り、ポケットを裏返したが、金は一スーもなかった。彼は叫び出した、「助けてくれ!」

 最後の菓子を一つ食いそこなうのは、実につらいことである。

 

二 行進中のガヴローシュ  Taka your place! Take your chance! 

 ガヴローシュは歌いながら、ピストルを振り回す。次第に元気を取り戻していった。「みな戦おうじゃねえか、もう圧制はたくさんだ!」。途中で四人のおばさんとのやりとり。

 

三 理髪師の至当なる憤慨

 ガヴローシュは、例の理髪店の前を通りかかる。理髪師は老兵士のひげを剃っていた。「大変だ!」「大砲の弾です。」――が、それは石だった。ガヴローシュは走り去った。「あの野郎!」

 

〔ガヴローシュの経路〕

メニルモンタン街→ポン・トー・シュー街→サン・ルイ街→パルク・ロアイヤル街→トリニー街→パヴェー街→オリム・サンジェルヴェー→サン・ジャック市場(合流)→サン・メーリー

 

四 少年老人に驚く

 サン・ジャック広場で、モルラン河岸(ラファイエットの辻馬車を引っ張って行こうとしたところ)からやって来たABCの仲間たちと出会う。ガヴローシュは、クールフェーラックに誘われる。バオレルの緋のチョッキを見て、通行人は「やあ赤党!」と叫んだ。高齢のご老人が、ひとりこの群れに入って歩いていた。

 

――ガヴローシュはそれに気づいた。

「あれは何でしょう?」と彼はクールフェーラックに言った。

「爺さんさ。」

 それはマブーフ氏であった。

 

・アンジョルラス…二連発の猟銃を持つ。教書をはぎとったバオレルをとがめる。

・クールフエーラック…仕込み杖を振り回している。

・コンブフェール…国民兵の銃と二挺のピストルを持つ。

・フイイー…サーベルを抜いて、「ポーランド万歳!」と叫んでいる。

・バオレル…カラビン銃を持つ。壁の教書をはぎ取った。ガヴローシュはそれに感心して、このときからバオレルを学び始めた。

 ――彼は緋のチョッキを着て、すべてを打ち砕くような言葉を発していた。

・ジャン・プルーヴェール…騎兵用の古い短銃を持つ。

 

五 老人 To the barricade!

 アンジョルラスとコンブフェールとクールフェーラックのこれまで。レディギエール街で、千鳥足で歩くひとりの老人に出会った。マブーフ老人だった。老人は青年たちについてくる。足取りがにわかにしっかりとしだして、ほとんど縦列のまっさきを進んでいった。

 

 ――アンジョーラとその仲間は、竜騎兵が襲撃を始めた時に、ブールドン大通りの公設倉庫の近くにきていた。アンジョーラとクールフェーラックとコンブフェールとは、「防寨へ!」と叫んでバソンピエール街の方から進んだ人々のうちにはいった。

 

――「マブーフさん、家へお帰りなさい。」

「なぜ?」

「騒ぎが起こりかかっています。」

「それは結構だ。」

「サーベルを振り回したり、鉄砲を打ったりするんですよ、マブーフさん。」

「結構だね。」

「大砲も打つんですよ。」

「結構だ。いったいお前さんたちはどこへ行くのかな。」

「政府を打ち倒しに行くんです。」

「それは結構だ。」

 

――「何という激しい爺さんだろう!」と学生らはささやいた。昔の国約議会員のひとりだ、昔国王を殺した者のひとりだ、という噂が群集の中に伝わった。

 

六 新加入者

 ビエット街で「半白の髪をした背の高い男」が加わった。ヴェールリー街でクールフェーラックの家を通りかかる。クールフェーラックが忘れ物を取りに帰ると、門番が、部屋で一時間前から帰りを待っている人がいると言う。部屋に戻ると労働者風の若者がおり、「すみませんが、マリユスさんは?」と問う。クールフェーラックが、マリウスのことはわからないが、自分はバリケードに行くと伝えると、若者はついてくると言った。そして、彼らはなんとなくサン・ドゥニ街まで来てしまった。