ビクトル・ユーゴー『レ・ミゼラブル』読書メモ㉗

 

ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 レ・ミゼラブル LES MISERABLES 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌 (aozora.gr.jp)

 

第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌

 

 

第一編 歴史の数ページ

 

一 善き截断

 1831年・32年について、歴史的な意味を説明する。まずは、1814年の王政復古から、1830年の七月革命までのブルボン家について論じる。

――七月革命は、事実を打ち倒す正義の勝利である。光輝に満ちた事柄である。

 

二 悪しき縫合

 1830年と1848年の中間の時期を象徴するのはルイ・フィリップだった。

――中流民を社会の一階級となさんとしたのは誤りである。中流民とは単に民衆のうちの満足してる部分にすぎない。

 

三 ルイ・フィリップ

 ルイ・フィリップという「中流社会」を最もよく代表した人物への賞賛。 

――彼は落胆や倦怠や美と理想との趣味や無謀な寛大や理想郷や空想や憤怒や虚栄や恐怖などを少しも知らなかった。個人的のあらゆる勇敢さをそなえていた。

――察知の能力は持たなかったが、観察眼をそなえていた。人の精神にはあまり注意を向けなかったが、人の性格にはよく通じていた

――あまりに多く統治してはいたが、十分に君臨してはいなかった。

――ルイ・フィリップは、もし少しく名誉を好むの念を有し、もし有効なるものに対する感情と同じくらいに偉大なるものに対する感情を有していたならば、その世紀の卓越せる人物のうちに加えられたであろう。

――ルイ・フィリップはあまりに家父的な王であった。

――ルイ・フィリップは白日の王であった。彼の治世中は、印刷出版は自由であり、弁論は自由であり、信仰と言語とは自由であった。

――ルイ・フィリップより王を差し引けば、彼は一個の人間となる。そしてその人間は善良である。時としては嘆賞すべきまでに善良である。

――訴訟記録を取り上げ、重罪裁判事件を検査しつつ夜を過ごした。全ヨーロッパに対抗するも一事ではあるが、しかし死刑執行人の手よりひとりの男を救い出すのはなおいっそう重大なことであると、彼は思っていたのである。

――歴史中においては善良さはまれなる宝石とも言い得るがゆえに、善良であった者は偉大であった者よりもほとんどまさると言ってもさしつかえない。

 

四 根底の間隙

 1830年政府が誕生直後に陥った苦難について。さすがのルイ・フィリップもこれにはお手上げだった。政府は、王党派からも共和党からも攻撃され、全ヨーロッパと歩調を合わせることも求められた。そして、社会主義についても説明される。

――外に現われては公衆の勢力と、内にあっては個人の幸福と、その二つが結びつく時に、社会の繁栄が生じてくる。

 

五 歴史の知らざる根底

 パリの労働者たちが団結しはじめ、革命の熱が広がっていった。民衆の友の結社→ドロア・ド・ロンム結社(人権結社)→アクシオン結社(行動結社)へと進んで行った。学生たちも活動を始め、ミューザン珈琲店に集まっていたABCの友の結社も、秘密の集会を開いていた。

 

六 アンジョーラとその幕僚

 ミューザン珈琲店で、アンジョルラスは仲間に指示を出す。メーヌ市門へはマリウスが行く予定だったが、彼はもう来ない。グランテールが志願するが、アンジョルラスはなかなか同意しない。しかし、その熱意に負けて、「僕は君を試してみよう。メーヌ市門へ行ってくれ」と命じたが、あとでアンジョルラスがメーヌ門へ行ったところ、グランテールは喫煙所で男とドミノ遊びに興じていた。

――グランテールは、家に行ってロベスピエール式のチョッキを着てきたのである。「赤だ。」と彼ははいってきながらアンジョーラの顔をじっと見て言った。それから強く手のひらで、チョッキのまっかな両の胸をなでつけた。

――コンブフェールの哲学的な鋭い雄弁、フイイーの世界主義的熱情、クールフェーラックの奇想、バオレルの笑い、ジャン・プルーヴェールの憂鬱、ジョリーの学問、ボシュエの譏刺、それらのものを彼は結合して、方々で同時に発火する電気の火花を脳裏に描き出した。

 

・クールフェーラック →工芸大学生を調べる

・フイイー →グランシエールの者を調べる

・コンブフェール →ピクピュスへ行く

・バオレル →エストラバードを見回る

・プルーベール →石工の熱が冷めかかっているから、グルネル・サン・トノレ街の仲間の様子を見て来る

・ジョリー →デュピュイトランの病院で医学校の者たちを見て来る

・ボシュエ →裁判所を回って、見習い弁護士に言葉をかける

・アンジョルラス →クーグールド結社へ行く