ビクトル・ユーゴー『レ・ミゼラブル』読書メモ⑮

 

ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 レ・ミゼラブル LES MISERABLES 第二部 コゼット (aozora.gr.jp)

 

 

第八編 墓地は与えらるるものを受納す The Convent

一 修道院へはいる手段

 ジャン・ヴァルジャンは、フォーシュルヴァン老人に、「これから私はここに置いてもらわなくてはならない」と言った。老人は自問自答しつつも、自分の命を救ったマドレーヌ氏を助けようと決めた。しかし、修道院にとどまることも出ていくことも、とても困難なことだった(修道院に置いてもらうにしても、男禁制の女修道院の中にすでに入り込んでいる状況はまずいので、あらためて、門から入ってもらう必要があった)。ちょうど、ひとりの修道女が亡くなり、修道院はあわただしくなっている。このままでは見つかってしまう。

 ――ジャン・ヴァルジャンはますます深く考え込んだ。「この修道院のおかげでわれわれは助かるだろう」とつぶやいた。それから彼は声をあげた。

「そうだ、困難なのはここにとどまることだ。」

「いえ、」とフォーシュルヴァンは言った、「出ることが困難なんです。」

 

二 難局に立てるフォーシュルヴァン

 フォーシュルヴァンは、イノサント修道院長に呼ばれる。フォーシュルヴァンは、弟がいるので、自分の代わりにここで働かせてほしいと言った。院長は、鉄の棒を一本手に入れてほしいと頼む。

 

三 イノサント長老

 イノサント長老は、フォーシュルヴァンに、祭壇のわきの敷石をどけて、穴倉を開き、クリュシフィクシオン長老を埋葬せよと命じられる。しかし、警察は……ととまどうフォーシュルヴァンに対して、修道院長は、修道院の埋葬の権利について滔々と語る。フォーシュルヴァンは、政府をあざむくために棺に土を入れることや、すばやく埋葬するために力持ちの弟の助けが必要であることなどを伝えた。「フォーヴァン爺さん、私はお前を満足に思いますよ。あした葬式がすんだら、お前の弟を連れておいでなさい。そして、その娘も連れて来るように言っておやりなさい。」

 

四 ジャン・ヴァルジャンとアウスティン・カスティーレホーの記事

 小屋に戻ったフォーシュルヴァンは、うまくいったとマドレーヌ氏に伝える。マドレーヌ氏は、空棺にひそんで修道院から出て行く計画を老人に伝える。「一心に逃げようとする者は、咳やくしゃみはしないものだ。」。墓地に着いた後、自分で棺から出てくれたら、あとは老人が墓堀りのメティエンヌ爺さんを酔わせて、なんとかするという話になった。

 

五 大酒のみにては不死の霊薬たらず

 ヴォージラール墓地へ向かう途中、メティエンヌ爺さんが死んだことを知らされる。新しい墓掘りのグリビエは、「俺は学問をしたんだ。第四級まで卒えたんだ。酒は飲まない。」と言うので、フォーシュルヴァンは、真っ青になる。「なんて狂言だ!」と、繰り返す。

 ――ナポレオンの後にはルイ十八世が出で、メティエンヌの後にはグリビエが出る。おい、俺の名はグリビエというんだ。

 

六 四枚の板の中

 ジャン・ヴァルジャンは土の中に葬られた。土が落ちてきて、息をしていた穴をふさぎ、気を失った。

 

七 札をなくすなという言葉の起源

 時間は巻き戻って、墓地へ向かう途中、フォ-シュルヴァンは懸命にグリビエを酒に誘おうとしていたが、うまくいかない。グリビエは墓掘り人が「札」を忘れてしまったことに気づいて、あわてて取りに帰る(すごい罰金になってしまう)。その間にフォーシュルヴァンは、必死に埋められた棺を開く。「死んでいなさる!」。その後、気絶していたジャン・ヴァルジャンは息を吹き返した。グリビエの「札」は、フォーシュルヴァンがこっそりポケットから抜きとったのだった

 

八 審問の及第

 ジャン・ヴァルジャンは、フォーシュルヴァンに連れられて、修道院長のところへ向かう。そして、無事、フォーシュルヴァンの弟として紹介することに成功した。

 ――修道院長はジャン・ヴァルジャンの様子を検閲した。目を伏せて見調べるくらいよくわかることはないとみえる。

 それから彼女は彼に尋ねた。

「弟というのはお前ですか。」

「はい長老様。」とフォーシュルヴァンが答えた。

「何という名前ですか。」

 フォーシュルヴァンが答えた。

「ユルティム・フォーシュルヴァンと申します。」

 彼は実際、既に死んではいたがユルティムという弟を持っていた。

 

九 隠棲

 ジャン・ヴァルジャンは、庭で働き、大変役に立った。コゼットにも笑顔が戻った。

 ――コゼットは修道院でもなお沈黙を守っていた。コゼットはごく自然に、自分をジャン・ヴァルジャンの娘であると思い込んでいた。その上彼女は何事も知らないので何も言うことはできなかった。

 ――彼女はじきに修道院になれてきた。ただ人形のカトリーヌを惜しんだが、あえて口に出しては言わなかった。けれども、一度彼女はジャン・ヴァルジャンに言った。「お父さん、こうなるとわかってたら、あれを持って来るんだった。」

 ――彼は、生涯の二つの危機に際して相次いで自分を迎え取ってくれたものは、二つの神の住居であったことを考えた。第一のものは、すべての戸がとざされ人間社会から拒まれた時に彼を迎えてくれ、第二のものは、人間社会から再び追跡され徒刑場が再び口を開いた時に彼を迎えてくれた。第一のものがなかったならば、彼は再び罪悪のうちに陥っていたであろう。また第二のものがなかったならば、彼は再び苦難のうちに陥っていたであろう。