ビクトル・ユーゴー『レ・ミゼラブル』読書メモ⑭

 

ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 レ・ミゼラブル LES MISERABLES 第二部 コゼット (aozora.gr.jp)

 

第六編 プティー・プクピュス ※第六・七編は読み飛ばしても大丈夫。

一 プクピュス小路六十二番地

 ベルナール派修道女のプクピュス修道院の暗くて陰惨な様子を描写する。

 

二 マルタン・ヴェルガの末院

 プクピュス修道院の由来や、無私の信仰生活を説明する。

 

三 謹厳

 そこが閉ざされた世界であることが描かれる。

 

四 快活

 若い娘たちの無邪気なやり取りが記されている。

 ――かわいいこと! 大人のようにジャミパンの上皮だけを食べてるわ!

 

五 気晴らし

 食事のきまり。アルベルティーヌ夫人をめぐる憶測。修道女についてのユーゴーの持説。

 

六 小修道院

 なつかしの昭和について語る随筆のようなものだろう。

 

七 影の中の数人の映像

 修道院長イノサント長老など、いろんな長老の紹介。大司教と庭番以外は、基本的に男がいないという話。

 

八 心の次に石

 全然入ってこないが、しばらくお付き合いするしかない……。歴史をなぞっていくようだ。

 ――精神的の方面を大略述べた後に、その物質的方面のすがたを少しく指摘することはむだではないだろう。また既に読者にはそれが多少わかってるはずである。

 

九 僧衣に包まれし一世紀

 ご自由に……。

 ――なおここにも一つ枝葉の点を述べることを許していただきたい。これは本書の内容とは没交渉のものではあるけれども、この修道院が独特な点を有することを了解せんがためには、きわめて特異な有効なものである。

 

十 常住礼拝の起源

 サン・サクルマンのベネディクト修道女会の起源が語られる。会派のちがいなどの説明。

 

十一 プティー・プクピュスの終わり

 修道院の衰退。厳しい規則が重荷となっていたことや、

 ――十九世紀において、宗教的観念は危機を閲している。人はある種のことを学んでいない。けれども、一を学ばずとも他を学びさえするならば、それも別にさしつかえはない。ただ人の心のうちに空虚を存してはいけない。またある種の破壊がなされている。ただ、破壊の後に建設がきさえするならば、それも至極いいことである。

 

第七編 余談

一 抽象的観念としての修道院

 ――人間のうちに無窮なるものを見いだす時は、たといそれが正当につかまれていると否とを問わず、吾人は常に尊敬の念に打たれる。

 

二 歴史的事実としての修道院

 時代遅れとなった修道院を批判する。特にその陰惨な一面を直視しようとしているようだ。

 ――歴史、理性、および真理の見地よりすれば、修道院制はしりぞけらるべきものである。

 ――ヴィレルの修道院において、その中庭の牧場の中央に終身囚の穴と、ディール川の岸に半ばは地下に半ばは水の下になってる四つの石牢とを、本書の著者は親しく見たのである。

 

三 いかなる条件にて過去を尊重すべきか

 スペインやチベットの修道院制を強い言葉で非難する。

 ――修道院を説くは沼沢を説くに等しい。その腐敗性は明らかであり、その澱みは不健全であり、その毒気は民衆に熱を病ましめ民衆を衰弱せしむる。

 ――パリーのうちにローマを建てながら、一修道生活があるとすれば、それは時代錯誤である。普通の時にあっては、時代錯誤を解放させ消滅さするには、それができ上がった年号を呼ばすればそれで足りる。しかしながら今は普通の時ではない。戦おうではないか。

 

四 原則の見地より見たる修道院

 ――修道院を共和国に変容せしむるためには、ただ自由ということで足りる。

 

五 祈祷

 ユーゴー、無窮なるものについての自説を開陳する。

 ――人の精神から何物をも取り去らないようにしようではないか。除去することは悪いことである。ただ改革し進化させなければいけない。

 ――民主主義の偉大さは、何物をも否定しないことであり、人類の何物をも否認しないことである。人間の権利の側に、少なくともその横手に、魂の権利がある。

 

六 祈祷の絶対善

 ユーゴー、無神論と虚無主義について語る。

 ――見ることと示すこと、それだけでも十分ではない。哲学は一つのエネルギーでなければならない。人間を進化せしむることをその目的とし結果として有しなければならない。

 ――信仰と愛という原動力たる二つの力なしには、人間を出発点として考えることもできず、進歩を目的として考えることもできない。

 

七 非難にうちになすべき注意

 修道院の非難を続ける。

 

八 信仰、法則

 腐敗した修道院や教会を非難しつつ、信仰と沈思の大切さを説く。

 ――一つの信仰、それこそ人間にとって必要なるものである。何をも信ぜざる者は不幸なるかな!