ビクトル・ユーゴー『レ・ミゼラブル』読書メモ④
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 レ・ミゼラブル LES MISERABLES 第一部 ファンティーヌ (aozora.gr.jp)
※ ―― …引用部分。
※ 緑文字 …映画と関連した描写。
第一部
第三編 一八一七年のこと I Dreamed a Dreamの歌詞は、この第三編の内容。
ファンティーヌが、最初の男(トロミエス)に捨てられる話。前回もここまでは読んだ気がする。
一 一八一七年
1817年。たくさんの雑多なことが並んでいる。別のことをしながら、自動音声で読み上げるくらいがちょうどいいと思う。
二 二重の四部合奏 He slept a summer by my side He filled my days with endless wonder He took my childhood in his stride
生々しかったり、男尊女卑なところもあったりで、なかなか感情移入が難しい。前節を乗り越えたと思ったら、その先にもまだ壁があった。四人の学生が、それぞれの情婦を持っており、男たちは、何かよからぬことを計画している。
――賢い? そしてトロミエスを思う? と人は反問するだろう。が、愛は知恵の一部なりとソロモンは答えるであろう。吾人はただこう言うに止めておこう、すなわち、ファンティーヌの愛は、最初の愛であり、唯一の愛であり、誠ある愛であったと。
三 四人に四人
八人の男女が馬車で連れだってサン・クルーへ。ファンティーヌが賛美される。手振りの大きな詩。
――若い女たちは、籠から出た小鳥のように騒ぎ回りさえずり回った。まったく夢中になっていた。時々男たちを軽くたたいた。人生の朝の酔いである! 愛すべき青春の年である!
――恋は過ちである。さもあらばこそ、ファンティーヌは過ちの上に浮かんでいる潔白そのものであった。
四 トロミエス上機嫌にてスペインの歌を歌う。
ファンティーヌだけ、ぶらんこに乗らなかったので、ファヴォリットに非難された。
五 ボンバルダ料理店
男女8人は料理店に行く。文脈を無視した当時の風俗の雑多な紹介がほとんどを占めているので、物語は遅々として進まない。社会の諸相を描こうとしているのだろう。こういう部分は、再読のときに歴史を学びつつ、理解を深めればいいと思った。
六 うぬぼれの一章
男女は料理店で食事を楽しみつつ、愛を確かめ合っている。
七 トロミエスの知恵。I dreamed a dream in time gone by When hope was high And life worth living I dreamed that love would never die
酔ったトロミエスの饒舌が止まらない! 「饒舌だ」と一言だけ書いてくれたらいいのだが、本当に長々とした饒舌に付き合わされることになる。
――カスティーユの樽アローブは十六リットルであり、アリカントの樽カンクロは十二リットル、カナリーの樽アルムユードは二十五リットル、バレアールの樽キュアルタンは二十六リットル、ピーター大帝の樽ボットは三十リットルである。
――僕はファンティーヌについて一言も費やさなかったが、ファンティーヌこそは、夢想的な瞑想的な沈思的な敏感な女である。ニンフの姿と尼僧の貞節とをそなえた幻影であって、誤ってうわ気女工の生活のうちに迷い込んだが、しかし幻のうちに逃げ込み、歌を歌い、祈りをし、何を見何をしてるかを自ら知らずして蒼空をうちながめ、小鳥の多い空想の庭の中を空を仰ぎながらさ迷う女である。おおファンティーヌよ、このことを知れ、我トロミエスは一つの幻にすぎないことを。しかし彼女はこの言を耳にも入れない、空想の金髪の娘よ! 要するに彼女のうちにあるものは、新鮮、爽快、青春、朝の穏やかな光である。
八 馬の死
トロミエスはいつまでもしゃべり続ける。ボンバルダの店から、川岸で一匹の馬が倒れるのを見える。ファンティーヌが馬をあわれむ。暗示的な一幕。
九 歓楽のおもしろき終局 But the tigers come at night With their voices soft as thunder As they tear your hope apart As they turn your dream to shame
「皆様へと言って旦那方が置いてゆかれた書き付けです。」と手渡された手紙によって、四人は捨てられたことが明らかに。「およそ二カ年の間、われわれは貴女たちを幸福ならしめた。それについてわれわれに恨みをいだきたもうなかれ。」。ファンティーヌは泣いた。
―― 一時間後、自分の室に帰った時に、ファンティーヌは泣いた。前に言ったとおり、それは彼女の最初の恋であった。彼女は夫に対するようにトロミエスに身を任していた。そしてこのあわれな娘にはもう一人の児ができていたのであった。
第四編 委託は時に放棄となる
10か月後。 1818年になった。テナルディエのところに、ファンティーヌの娘、コゼットが預けられる話。このあたりから、物語がようやく始まる。
一 母と母との出会い
テナルディエの店に、ファンティーヌがやって来て、自分の身の上について語った。三人の子どもたちが遊ぶ。ファンティーヌはテナルディエ夫妻に五十七フランで子どもを預ける。
二 怪しき二人に関する初稿
テナルディエ夫妻について。まっすぐすぎる非難の言葉。ユーゴーの言葉は、目的を輝かせる炎のようだ。言葉はまるで敵を焼き尽くす火の玉だ。ユーゴー、下等な小説の害を説く。ついでに、洗礼名の混乱の話をする。
――女のうちには野獣のような性根があり、男のうちには乞食のような素質があった。二人とも、悪い方にかけてはどんなひどいことでもやり得る性質だった。
三 アルーエット
コゼットは、テナルディエ夫妻にひどい扱いを受けている。5歳で女中となった。アルーエット(ひばり)は、土地の人たちがコゼットにつけたあだ名。
――一方を愛すれば必ず他方を憎むような性質の人がいる。テナルディエの上さんは、自分の二人の女の子をひどくかわいがったので、そのために他人の子を憎んだ。
――テナルディエの上さんがコゼットにつらく当たっていたので、エポニーヌとアゼルマも意地が悪かった。その年齢の子供らは母親の雛形ひながたにすぎない。ただ形が小さいだけのものである。
――小鳥くらいの大きさで、震え、恐れ、おののき、毎朝その家でもまた村でも一番に起き上がり、いつも夜の明けないうちに往来や畑に出ていたのである。