【理論化学の穴】⑪「ボイル・シャルル!」

 

【理系化学のバイブル】

 

※基本的に、この本をもとに授業をしています。この本で勉強していて、少し難しいという場合に、役に立つ授業です。

 

 

 今回は、ボイルシャルルの法則を見ていきます。まず、基本概念の確認ですが、Vは気体の体積。気体分子がどの範囲を動けるかということを示すもので、一般的には容器の体積のことを指します。標準状態の気体は、どんな分子であっても1molあたり22.4ℓです。複数の気体が含まれている場合も、合計1molではなく、それぞれの気体が1molずつということで、他の気体分子が存在しても邪魔されることはありません。これは、22.4ℓに対して、分子の体積が相対的に非常に小さいため、無視しているからです。また、原子の勉強をしたときには、原子番号が大きくなるほど、原子半径が大きくなっていくことを習ったし、結晶の単元のときには、充填率を求めたりして、原子の体積は重要な意味を持っていましたが、気体では、相対的に小さいものとして、まずは粒子自体の体積は無視して考えるという、このあたりの区別をしっかりしておきましょう。複数の気体が混合しても、気体の体積には関係ありませんが、圧力には影響があるので、混同しないようにしてください。ちなみに、気体の話でずっと分子と言っているのは、標準状態で気体の物質は、すべて分子をつくるからです。

 次に、温度。ラージTで表すのは絶対温度で、単位はケルビンです。一方、スモールtは、セルシウス温度で、単位は℃です。温度は分子に与えられる熱エネルギーの大きさを示すもので、高い温度であるほど、分子は活発に運動するようになります。つづいて圧力Pです。気体分子は、容器の中を飛び回って、器壁、つまり、容器の壁に衝突します。そして、器壁が1m2あたりに、気体から受ける力が気体の圧力です。

 体積・温度・圧力のうち、どれかひとつを固定して、残り二つの関係を正しくイメージすることが、この単元の出発点です。

 まずは、ボイルの法則。温度を一定に保ち、体積を変化させると、圧力がどうなるかを観察します。今回は体積を減らしました。すると、中に入っている気体分子の密度は増加しますね。密度が増加すると、それだけ器壁に分子が衝突する回数が増えます。それにともない、気体分子が器壁を押す力、圧力も増加します。くわしく観察すると、体積と圧力は反比例の関係にあるとわかった。体積を2倍にすると、圧力は1/2。体積を1/2にすると、圧力は2倍。これがボイルの法則です。ただし、体積が変化して気体分子の密度が変化しても、分子同士の衝突はここでは考えません。分子自体の体積は0と考えているからです。

 一方、シャルルの法則は、圧力を一定にして、温度を変えていきます。蓋を固定せずピストンにしておけば、温度変化に合わせて体積が変化する様子が観察できます。たとえば、温度が上がった場合をイメージしてみます。気体分子の持つエネルギーが大きくなるので、器壁への衝突の衝撃もまた、大きくなります。また、分子の速度が上がって、長い距離を移動するようになるので、必然的に衝突回数も増えます。こうして、圧力一定なら、体積と温度の間には、比例関係が成り立つことがわかったというのが、シャルルの法則です。ただ、この正確な比例関係の発見に至るまでには、精密な温度計の発明が必要でした。気体反応の法則のゲーリュサックが、実際に測定をおこなって、1℃上昇するごとに、体積が1/273ずつ増加することをつきとめます。ただ、これを℃で表すと、y=ax+bのグラフとなり、y切片が邪魔なので、-273℃を0ケルビンとする絶対温度で表現します。こうして、V=kTという比例式ができました。この式の意味するのは、温度を低くしていって、-273℃の絶対零度になると、気体の体積が0になるということです。-273というのは、グラフを延長、つまり、外挿して求めた値で、実際には、体積0の気体にはなりません。その理由はまたのちほど触れるので、考えて見えください。ちなみに、22.4ℓという標準状態の気体体積も、温度を一定にして、圧力と体積の関係をグラフにしたとき、圧力が0になる値を外挿して求めたものです。標準状態の大気圧は1.01×105Paですが、これは特別な外圧をかけない状態での大気がもたらす圧力のことです、大気自身が受ける圧力のことではありません。

 さて、人海戦術のボイル、ドーピングのシャルル、両方を合わせてボイル・シャルルの法則にまとめます。体積が両方に共通するので、ひとまずこれを左辺に置きます。圧力に反比例し、絶対温度に比例する、ということで、このように書けます。あるいは、PV/Tが一定というふうに読み替えることもできます。ボイル・シャルルの法則を、ボイルとシャルルから導いてみます。まずはボイルで、温度T1で一定のまま、体積と圧力を変える。体積はこのあとも変化するので、便宜上1.5としてあります。さらにここから、シャルルの法則で、今度は圧力をP2で固定したまま、温度をT1からT2に変化させる。それに合わせて体積もV2に変わります。途中のV1.5を代入によって消去すると、こうしてボイル・シャルルの法則が導けます。ボイル・シャルルの法則にしたがい、PV/Tが一定になる気体を、理想気体と言います。実在気体との違いは、分子間力と、気体自身の体積を無視している点です。実在気体は、絶対零度で体積が0になる前に、分子間力によって結びついて、液体・固体へと姿を変えます。だから、「気体」のまま体積が0になることはないのです。また、分子自体の体積があるので、0にはなりえません。ということで、今回の授業は以上です。