トルストイ『戦争と平和』~前半で投げ出さないために①~

 

 

 

 戦争の場面が始まりました。わたしは、地図を頭に置かないまま読み進めてしまいました。たしかに、文庫本に地図はついているのですが、ただの「地図」なので、参照してもよくわからないなー、めんどくさいなーと、読み飛ばしました。また、ツナイム強行軍あたりの戦況説明がかなり冗長なのも、めんどくささに拍車をかけました。その結果、あとで「クレムスで云々」と言われても、だれが何をしたところか、まったく思い出せないということが起きてしまったのでした。

 そんなことが起きないように、戦いがあったり、重要な出来事があったりする場所を、日付とともに①~⑥まで印をつけておきました。この6つの地名は、絶対暗記推奨です。すべてオーストリアの都市です。

 

①ブラウナウでの閲兵式:クトゥーゾフの雄姿を目に焼き付ける。

                ポドリクス狙撃兵連隊に、ドーロホフとティモーヒンがいる。

                近くに駐屯しているパヴログラード軽騎兵連隊には、ニコライとデニーソフがいる。

 戦争の場面で、部隊全体に個性が与えられているのは、3つ(ポド歩兵とパヴ騎兵と中央砲兵)だけです。そのうち2つがここで登場します。

②エンス渡河:クトゥーゾフ隊は、オーストリア軍の敗北を受けて、ウィーンへ向けて退却を行っています。その途中で行われた小さな戦闘ですが、ニコライにとっては初陣でした。

③クレムスの戦いフランスのモルチエを破った戦いですが、アンドレイの上官だったシュミット将軍が戦死します。アンドレイの初陣です。

④アンドレイ急使:その直後、オーストリアの大本営があるブルノへ、アンドレイは勝利を知らせる急使として赴きます。ウィーンはオーストリアの首都ですが、すでに陥落が予想されるため、王宮はブルノに移っています。そこで冷たく扱われたり、外交官ビリービンと会ったりしました。

⑤ウィーン陥落アンドレイは、ブルノでビリービンからウィーン陥落を知らされます。ナポレオンはシェーンブルン宮殿に入り、そこで指揮をおこないます。ツナイム強行軍によって、クトゥーゾフ軍の退路を断つために、ミュラー将軍を送ります。

⑥シェングラーベンの戦い:ツナイムに先行されるわけにはいかないので、クトゥーゾフは、バグラチオン先遣隊4000を送って、シェングラーベンで足止めする作戦を取ります。バグラチオンは、ロシアで最も武勇に優れた将軍です。バグラチオン隊は、本隊が追いつくまでのいわば捨て石となったのでした。アンドレイは、志願してこの部隊に加わります。また、パヴログラード、ポドリクス、中央砲兵の三連隊も、この戦いに参加します。ミュラーは、この先遣隊を本隊と勘違いしたため、偽の和平交渉をもちかけて、ウィーンからの本隊が到着するのを待つ作戦を取りましたが、かえってこれは、クトゥーゾフにとって好都合でした。しかし、ナポレオンに激怒され、ミュラーはあわてて戦闘を開始します。アウステルリッツの戦いはあっけなくケリがついたので、物語の中では、このシェングラーベンの戦いが、1805年の戦争の山場になります。