トルストイ『戦争と平和』人物事典62(467~480人目)

 

・モレール(3-3-25)…ランバール大尉の従卒。クワス(フランス兵たちは豚のレモネードと呼んでいる)が絶品だと喜んでいる。ずんぐりしたフランス人。森にひそんでいたところ、主人のランバールともに、ロシアの第五中隊に見つかり、助けられる。おかゆとウォッカで、にわかに陽気になった。酔いが回って、片手で隣の兵士を抱いて、歌い始める。モレールは、鍋に3杯おかゆを食べた。年寄りの兵士が、バカ騒ぎする若者たちを見ながら、「やっぱり同じ人間だよ」と言った。これが1812年の戦いの最後の場面だった。

・モロー(1-1-24)…ジャン・ヴィクトル・マリー・モロー。フランスの将軍。ナポレオン転覆の陰謀に加わって、のちにアメリカに亡命する。

・モンテスキュー(2-3-5)…あのモンテスキュー。アンドレイはモンテスキューの信奉者らしい。スペランスキーにそう語っていた。

・ヤーコフ(1-1-6)……深夜にアナトールのところに集まった八人の若者の一人。「ヤーコフ! 酒瓶持ってこい、ヤーコフ!」

・ヤーコフ・アルパートゥイチ⇒アルパートゥイチ

・ヤコヴレフ大尉(4-2-9)…モスクワでまごまごしており、脱出できなかった。ナポレオンにつかまって、アレクサンドル皇帝あての書簡を持って、ペテルブルグへ差し向けられた。

・ユスーポフ(3-3-16)…モスクワ放棄の日に、ベルグが、「ユスーポフの店の前を通りますと、顔見知りの支配人が飛び出してきて、何か買ってくれんかとたのむものですから」と言って、ロストフ公爵にタンスを運ぶための農民を貸してくれと頼んだ。既出の夫人との夫だろう。

・ユスーポフ公爵夫人(2-3-20)…ヴェーラが、「子供なんて少しも欲しくないわ。社会のために生きなくちゃ」と言うと、夫のベルグが「ちょうどそんなのを、ユスーポフ公爵夫人もしていたよ」と幸せそうに答えた。

・輸送兵(2-2-17)…デニーソフが入院している野戦病院で、病人の世話をしている「いったい誰がここの病人の世話をしているんだ?」とニコライが看護兵に尋ねると、隣の部屋からこの輸送兵が歩み出て、「閣下、ご機嫌うるわしく存じます!」と、ニコライに挨拶した。病院の上司と勘違いしたようだった。

・ユリネル(3-1-4)…バラショフを司令部へ案内した連隊長。

・ヨーゲル(2-1-11)…ダンスの先生。舞踏会を開く。ナターシャの先生。デニーソフも昔習っていた。年頃の青年男女にとって最高の舞踏会。男女カップルが成立するための場所。ロストフ伯爵の家の二階に妻と住んでいる。

・ラヴァーター(1741~1801)…スイスの観想学者。「かのラヴァーターならば、私の頭蓋には父性の突起が欠けているとでも言うところでしょうな」と、ワシーリー公爵が言った。

 

 ☆・ラヴルーシカ(1-2-4)

 

 

 パヴログラード軽騎兵連隊所属。デニーソフの従卒。農奴。海千山千ぶりで連隊中に有名。威勢が良くてちょっといんちきくさい。

 

 冒頭では、ニコライにコーヒーを入れたり、休暇から戻って来たニコライを迎えたりしている。その後、食糧徴発のときに、荷馬部隊が乾パンや牛を運んでいるのを見つけたと言って、デニーソフの暴挙のきっかけを作った。

 

 

 デニーソフがいなくなったあと、ニコライに譲り渡された。酒を飲んでは、主人の食事の支度もほったらかしていたので、鞭でどやされて、鶏を探しに行かされた。

 

ナポレオンと対面

 略奪に夢中になっているところを、フランス兵に捕まった。ナポレオンの前に連れてこられると、相手の性質を見抜き、すこしもうろたえずに、従卒仲間で話されていることを、すっかりしゃべった。そして、相手がだれかを知らないふりをして、「そりゃ、旦那方のほうにゃボナパルトがいて、世界中のやつらをやっつけたことは知ってますがね、だが、おれたちのことはそうはいかねえ」と言った。ナポレオンは、このコサックを驚かせてやろうとして自分が皇帝であることを通訳に伝えさせたが、ラヴルーシカには、はじめからわかっていることだった。あっと驚いて腰をぬかしたふりをした。ナポレオンは喜んで、褒美を与えて、自由にしてやった。そして、プラートフ軍の編成下のニコライを見つけ、ボロジノの一週間前に無事戻って来た。

 

 

 ・ラエフスキイ(4-2-7)

 

 まるまるとふとった髪の黒い美男子。クトゥーゾフの「大好きな英雄」。最後の勝者となるのは最後までがんばりぬいた者だと言って、クトゥーゾフを喜ばせた。ジュリーの手紙によると、二人の息子を両脇に抱えて、「ともに死すとも、この場を動かぬぞ!」と叫んだそうだ。

 ボロジノでは、主戦場でがんばっている。ボロジノ後の作戦会議では、いかにも短気者らしい顔をして、いつもの癖で鬢の黒い毛を指に巻き付けたり引っ張ったりしている。ベニグセンの意見に賛成したが、すでにモスクワが放棄されたことがわかっていないようだった。クトゥーゾフの言葉は、自分をあてこすっているのだと、エルーモフはラエフスキイに言った。

 

・ラザレフ(2-2-21)…ナポレオンからレジオン・ドヌール勲章をもらったロシアの兵士。